食事と精子の関係
精子は摂取した栄養から作られますので、当然食事からの影響もあるはずです。
・一般青年男性209名を対象に、食事内容と精液所見の関連を横断的に調査した。
精液所見と有意な関連を示したのは高血圧予防食であり、精子濃度、総精子数、総運動精子数が有意に改善した。
高血圧予防食に沿った献立にすることで、精子所見が改善する可能性があるということです。
(Hum Reprod 2019; 34: 1866)
高血圧予防食とは、
野菜、果物、魚、低脂肪の乳製品の摂取量が多くすること、
加工肉、塩、砂糖の摂取が少ない食事
・デンマークにて、青年男子2935名を対象として、ソフトドリンクと精子の関係を研究しました。
砂糖含有飲料を多く摂取した群は、そうでない群と比較し
精子数1320万/mL低下 、 総精子数2800万低下 と有意に低下が認められた。
人工甘味飲料を摂取すると精子運動率と男性ホルモン/LH比が有意に低下した。
エネルギー飲料では精子運動率が有意に低下した。
フルーツジュースでは精子正常形態率と男性ホルモン/LH比が有意に低下した。
(Hum Reprod 2021; 36: 3036)
ソフトドリンク摂取(甘い飲料全般)で精液所見が悪化することを示しています。
その他、いくつか噂になっている点について私見をお書きします。 (医学的な根拠は乏しいです。)
・乳製品には妊娠牛の女性ホルモンがはいっているので良くないのではないかという噂
→人においては、授乳をすることで女性ホルモン分泌はかなり抑えられている。赤ちゃんが母乳をとっても問題ないようになっている。牛も同じ哺乳類なので、同様の機構が働くことは当然である。女性ホルモンの含有量は非常に少ないと考えられます。多少入っているとは思われるので、大量には取らないことを勧めます。
・食品添加物
人体に様々な影響を起こすことが懸念されています。
現代の生活において、まったく取らないことは難しいかもしれませんが、減らす努力はしたほうが健康全般にとっても良いと思います。
ヒトの手が入ったものほど不自然な食物です。最も健康的な食物は、食材そのままだと思います。
自炊が少ない方は、一度自分の食事を見直してみることも必要かもしれません。
年齢と精子の関係
女性は年齢により、妊娠率の低下を強く受けます。
男性はどうなのでしょうか。
・ドナー卵子を用いて論文12件、計12,538周期をまとめた研究報告です。
胚盤胞到達率は男性の加齢に伴い減少した報告が2件のみある。
しかし、受精率、分割率、妊娠率、流産率、生産率は男性年齢とは有意な関連を認めなかった。
この論文では、男性の加齢が生殖機能に与える影響は極めて限定的で、胚盤胞到達率が減少し、精液量と運動率が低下することを示しています。
(Fertil Steril 2015; 104: 857)
・カナダにて、精液検査を実施した12,188名を対象に、年齢による各種パラメータの変化を後方視的に検討した。
精液量、精子濃度、総数、運動率、直進運動率は30歳台が最も良好で、加齢により徐々に低下するという結果だった。
精子形態異常率は年齢による変化を優位には受けなかった。
(Hum Reprod 2020; 35: 2213)
・欧米200箇所の不妊クリニックで精液を採取し、精子DNA損傷(DFI)の程度を、後方視的に検討しました。
精子は一定確率でDNA損傷のある精子が混じっています。その確率が低い精液ほど、質の良い精液ということです。
精子のDNA損傷率は加齢により有意に増加した。
41歳以下と42歳以上で比較すると、後者でおよそ2倍以上となった。
(Fertil Steril 2020)