男性不妊診察 ~泌尿器科 医療介入~
精液検査が不良な方の中には、それを誘引する病気をお持ちの場合があります。
精子が不良となる病気がみつかればそれを治療する、つまり医療的な介入で精子の改善が望めることがあります。
医療介入で改善が見込めるパターンは、主に下記①~③の病気が認められた場合です。
① 精索静脈瘤
精巣周囲の血管が拡張し、精巣が暖められてめられてしまうことで精子所見が不良となると推測されています。
造精機能障害の病因としては最も高頻度であり、
大きな病変があるほど(重症であるほど)、除去後に改善率が高くなります。
除去するためには、手術療法が唯一の治療法となります。
静脈瘤の重症度、精液状況、不妊治療経過から治療をするかを検討することになります。
② ホルモンバランス異常
高PRL血症や、低ゴナドトロピン(LH、FSH)血症などが主に精子所見を不良にする要因になりえます。
その場合、薬物療法にてホルモン環境の是正を行います。
③ 精巣腫瘍
癌を患っている状態であると精子所見は不良となります。
精子形成に悪影響を及ぼす悪性腫瘍としては、特に精巣腫瘍が代表的です。
そのため、精子所見不良精査のための全身検索としては、精巣腫瘍を否定することを行います。
睾丸痛などの自覚症状がない場合、この病気が見つかる可能性は非常に低いですが、
念のため否定しておくことが重要です。
(その他の臓器の悪性腫瘍でも、多くの場合で精液所見は悪化すると報告されています。たまたま、悪性腫瘍が見つかることは非常に稀ですし、精子が悪いからといって全身の癌を否定すべく全身検索を行うことは現実的ではありませんが、定期健康診断を受けることや、気になる症状がある場合は担当科で問題ないことを確認することはしておいても良いかもしれません。)
上記①-③の存在を見つけ、改善させることが男性不妊の観点で医療的にできることとなります。
このような疾患がないかを確認するために、
採血、触診、超音波検査などで精査をしていくことになります。
これら精査については、男性不妊症を扱うことができる泌尿器科医に診てもらうことが重要です。
茨城県内・近隣で男性不妊症を専門的に診てくれる施設は多くはないので、
推奨される施設を挙げていきます。
① 当院 (吉田医師のみ対応可)
吉田医師男性不妊外来時間帯
月曜14:30~16:00 水曜日9:30~11:00 金曜日14:30~16:00
学会等で不在となることがありますので、
来院予定数日前に医院HPの中段 News&Topics より
出勤状況のご確認をしてからご来院いただくようお願いします。
※精査は対応可能ですが、治療までは行うことができません。
原因疾患が見つかれば下記泌尿器科へご紹介となります。
② 筑波学園病院 (つくば市)
男性不妊専門の医師が常勤し、精査から治療まで幅広く対応していただけます。
紹介状が必要となりますので、医師へ相談下さい。

③ もりやファミリークリニック (守谷市)
男性不妊専門の医師が常勤して精査から初期治療まで対応していただけます。
診療時間も幅広く受診しやすい体制も整っています。
当院通院中であることをお伝えいただき、精液検査結果などのデータをご持参下さい。

④ 中央泌尿器科クリニック (水戸市)
当院通院中であることをお伝えいただき、精液検査結果などのデータをご持参下さい。
⑤ 独協医大さいたま医療センター(埼玉県越谷市)
男性不妊を積極的に対応していただける施設です。
紹介状が必要となりますので、医師へ相談下さい。
※男性不妊診療が、長期間かつ頻回になることは非常に稀です。
まずは精査を行い、治療が必要な病気があるかを確認することが肝要です。
※上記以外にも対応可能施設はあると思います。
(もし県内で上記以外で男性不妊診療可能施設がありましたら教えていただければ幸いです。)
他院専門施設で精査を受けられた方は、結果のフィードバックを当院へ行ってください。
① 精子所見悪化につながる病気が認められたか否か (例:精索静脈瘤など)
② 何かしらの治療手段が提案されたか否か (例:手術、薬物療法など)
上記2点のみ、ご報告をよろしくお願い致します。
治療が難しい男性不妊の原因
高度に精液所見が不良な場合には、それを誘引する染色体異常や遺伝子異常の有無を検索することがあります。
この詳細については、上記のような男性不妊の専門施設でよく情報を聞いていただいてから進めていくことになると思います。
精液検査が悪い場合、次世代へ影響するのか
精子が不良な状態で不妊治療をした結果、次世代への影響について心配されるカップルもいると思いますので、
そこについて論文報告を解説していきます。
1. 不妊治療後に産まれた男児の精液所見についての報告 (Fertil Steril 2022; 118: 671(デンマーク))
男性1058名の精液所見について、
不妊治療を行った両親から産まれた男性 vs 不妊治療を行っていない両親から産まれた男性
で比較したところ 両群で差がなかった。
2. ART治療により産まれた男児の精液所見についての報告 (Fertil Steril 2022; 117: 727(オーストラリア))
ART治療で産まれた男児120名 vs 非ART治療で産まれた男児356名
精液検査とホルモン検査の結果を比較した。
精子濃度や精子運動率、重度乏精子症(精子濃度500万/mL)の割合など、多くの項目で2群間に有意差を認めませんでした。 したがって、男性の精子状態は、男児には遺伝しないとしています。
※ 無精子症やcryptoozospermia(無精子症に近い状態、精液中に数匹しかいない状態)においては、一定確率で遺伝子変異が原因となります。 その場合は、産まれてきた男児も同様に男性不妊症を呈することがわかっています。
- 受診を勧められた場合、いつ頃受診するとよいですか?
男性不妊診察では、精子形成に悪影響を及ぼすような病気の有無を確認します。
もし何も見つからなければ、それ以上の通院は不要となることが多いです。
逆に何かしらの病気が見つかれば、それを解除する手段を講じ、その後精子状況が改善
するまでには1,2か月以上かかる可能性があります。
つまりどちらにしても、精子状況が変わるにはある程度の時間が必要となってきます。
そのため、少なくとも精査は遅くなり過ぎずに受診していただくことをお勧めします。