まず、精子が不良となる原因は、精索静脈瘤などの一部疾患がみつかる場合を除き、
多くは原因が不明であることがほとんどです。原因解明が進んでいない、
未開発な医療分野であるともいえます。
これまでに精子改善について様々な検証がされており、
ネット上でも多くのサプリメントが発売されていますが、
どれも信憑性が高いとは言い切れない状況でした。
しかし、近年ある種のサプリメントにより精液改善や妊娠率向上に関与する報告が
散見されております。
この項では、男性不妊むけにどのような成分がよいとされているのか、
また数あるサプリメントの中で医学的根拠が高いと判断されるものを
ランキング形式でご紹介します。
・精子改善といえば亜鉛サプリが有名であるが、有意な改善はみられない可能性がある。
・抗酸化作用を持つ物質は、精子所見改善に効果がある可能性が高い。
・PQQサプリは
各種サプリメントと精子改善についての報告・検証
それでは、サプリメントに関する報告を羅列していきます。
まず、精子によいと最も噂されている亜鉛についてからふれていきます。
高容量葉酸と亜鉛サプリで精液所見、精子DNAメチル化が改善された。
(Hum Mol Genet 2015; 24: 6301)
上記報告を受けて、米国で2370人の男性に対してRCT(最も信用性が高い研究)が行われた。
高容量葉酸と亜鉛サプリで精液所見、精子DNAメチル化は改善が認められなかった。
また、臨床妊娠率についても有意な向上は見られなかった。
(①JAMA 2020; 323: 35 ②Fertil Steril 2022; 117: 75 ③AAFP 2020)
葉酸+亜鉛で精子改善に効果がある報告はあるが、
質の高い研究モデルで再度試してみたら有意な精子改善はみられない、
妊娠率も変わらないという結果だった。
健康な男性189名(平均19.7歳)の精液所見と食生活について調査した。
カロテノイド(アルファーカロテン、ベータカロテン、ベータクリプトキサンチン、ルテイン、リコペン)、
ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE の摂取量を計算し、精液所見との関係を調べた。
(Fertil Steril 2013; 100: 1572)
・ベータカロテンとルテインの摂取量増加に比例して精子の直進運動率が増加しました。
ベータカロテンは摂取量が低い群と比較し、摂取量が多い群は直進運動率が6.5%高かった。
・リコペン(リコピン)摂取量の増加に伴い正常形態精子が有意に増加した。
・ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEとその他のカロテノイドの摂取量は、精液所見に有意な影響を与えなかった。
その他にも、精子に対して抗酸化作用をもつ物質を中心に、摂取することが良いとする論文が散見されています。
・クリプトキサンチン、ビタミンC、リコぺン、β-カロテンの摂取が精子に良い。
・精子に必要な抗酸化物質および微量栄養素は、ビタミンC、ビタミンE、葉酸、亜鉛であると推測される。
・ビタミンc摂取により、精子濃度が向上する可能性がある。
最後にマカ(Lepidium meyenii)についての報告です。
マカも男性不妊症に対するサプリメントとして、注目されています。
男性不妊症に対してマカを使用した研究報告は多数あり、その中で信頼性が高い研究結果をまとめますと、精子パラメーターが良くなった という結果と、あまり変わらなかった という結果が混在しています。 (Myeong Soo Lee,Maturitas.2016 / Hye Won Lee,Front Phamacol.2022)
精子にとって、確実に良い効果があるかは断定できませんが、良い効果をもたらす可能性がある食物という見解になります。
精子改善のために推奨されるサプリメント
結論としては、抗酸化作用をもつサプリメントや、
精子改善の可能性がある成分を万遍なく含んでいるサプリメントをとるのが良いと考えます。
男性不妊や、精子が不良な方に向けてのサプリメント商品は多数ありますが、
そのなかで推奨度が高いものを理由とともに掲載していきます。
不妊治療中の男性に一番使っていただきたいサプリメントは、
1位 PQQを含んだ製品であるセルアライブです。
PQQは強い抗酸化作用をもつ物質です。
精子運動性向上、受精率向上、体外受精成績向上を期待することができます。
研究報告など(上リンクから) からこちらのサプリメントが最も推奨できると考えております。
一般購入はできない製品ですので、別項で推奨理由、購入方法をご覧になり使用をご検討下さい。
2位 バイエル社のメネビットになります。
男性不妊の方にとって、良いかもしれないという成分が様々入ったサプリメントです。
こちらも別項で、メネビットの臨床データなども含めてご紹介します。
- PQQ(セルアライブ)とメネビットは併用してもよいのでしょうか。
念のため控えた方がよい可能性があります。
配合成分は異なっており、問題ないと考えられますが、
両剤とも抗酸化作用をもつ成分が多く含まれています。
補完的に良い作用をもたらす可能性もありますが、
抗酸化作用が強すぎになってしまう可能性もあります。
個人的には、まずはPQQの使用を検討いただけるといいと考えています。
- どの程度の期間使用するとよいのでしょうか?
精子は作られるまでに3か月弱の期間を要します。
少なくとも半年程度を目安として、長期間の使用を検討するとよいでしょう。
効果判定で精液検査を目安にされる場合も多いですが、
目的は妊娠成立であって、精液検査の改善ではありません。
推奨サプリの使用により、精子DNAの改善報告もありますので
サプリ使用による効果判定に適切な項目がないのが現状です。
治療経過全体(精液、胚培養経過、妊娠結果等)を通して、使用を継続するかを
判断していくことが好ましいと考えます。