運動と精子の関係

運動については肯定的なもの、否定的なもの、関連がないとする報告など様々みられます。
いくつか報告をみていきましょう。

関連がないとする報告
・米国にて、不妊治療中の男性2261人を対象とした研究では、精液パラメータは定期的な運動と相関しなかった。
(Wise et al., 2011)
・精液分析では、運動(頻度、種類、および継続時間)と精子所見の間に関係は検出されなかった。
                                (Wogatzky et al.、2012)

肯定的な報告
・スペインにて、身体的に活動的な被験者は、座りがちな対照者よりも精子運動性、正常形態率が高かった。
                                (Vaamonde et al., 2012)
・米国の学生を対象として、高いレベルの身体的努力は精子濃度、総精子数の増加と関連している。
                                (Gaskins et al., 2015)
・不妊治療中231人の男性集団のうち、中程度~激しい運動を行っていた男性では精子濃度が43%高かった。
                                (Gaskins et al., 2014)
・スポーツ選手、レクリエーション競技者、座りがちな対照者の精液サンプルを比較した。
精子の量、数、および運動性、形態学的に正常な精子の割合は、レクリエーション競技者が最も良好だった。
                                (Hajizadeh Maleki et al., 2012)

否定的な報告
・激しいトレーニングは、精液量、精子の数、濃度、運動性、正常形態率の減少と相関していることが示唆された。  
                                (Tartibian & Maleki、2012)
・サイクリングは、サドルに座ることによる機械的衝撃、生殖腺の過熱などにより、生殖能力にとって有害である。
多くの研究で、サイクリングは精子の形態異常、運動性の低下と関連している。
                        (Gebreegziabher et al., 2004; Kipandula & Lampiao, 2015)
・米国での前向きコホート研究では、不妊クリニックに通う男性2261人を対象に、精液所見と身体活動との関連性が評価された。 定期的な運動は精液パラメータと関連しませんでしたが、週に 5 時間以上のサイクリングは精子の濃度と運動性の低下と関連していた。
                                 (Wise et al., 2011)
・不妊治療中の男性231人の精液を調べた研究では、 週に 1.5 時間以上自転車に乗る男性の精子濃度は、自転車に乗らない男性よりも 34% 低かった。
                                 (Gaskins et al., 2014)
・モータースポーツ、サイクリング、または乗馬では、陰嚢温度の上昇が同程度で観察された。
                                (Bujan、Mieusset et al.2000)
・ランニングは過剰に行うと精液所見を悪化させる可能性があるが、
週 40~56 km 程度、1年間継続程度では、精液所見悪化は認めなかった。
                                (M. J. De Souza 1994)
・登山、低酸素環境での生活は精巣機能低下を引き起こす可能性がある。
                                (Pelliccione et al., 2011)
・標高 2,000 メートルを超える高地への曝露は、精子の運動性と正常形態率の低下引き起こす可能性がある。
ただし、これらの変化は可逆的であった(平地に戻れば治る)。 
                             (Pelliccione et al., 2011+ Verratti et al., 2008)

運動と精子の関係
①適度な有酸素運動、適度な筋肉トレーニングは精子を良くするために推奨される。 
②過度な運動(プロアスリート並)は逆に精子所見を悪化させる可能性がある。 
③陰嚢を圧排する運動(自転車など)は良くない。