卵管鏡実施までの流れ
つくば木場公園クリニック通院中の方で、卵管鏡をご検討される場合、
まずは当項をお読みいただき、大まかな内容のご理解をしていただきます。
処置までの流れは、大まかに下記の様になります。
①下記ブログを閲覧
②つくば木場公園クリニック受診し、卵管鏡実施の意思を確認
③看護師から補足説明、質問対応、同意書のお渡し、日程目安をお伝え
④お電話にて最終日程をご報告 (約1か月前を目安に)
⑤処置当日
卵管性不妊の基礎知識
卵管は、子宮から連続する約10㎝の管腔臓器です。
不妊の基本的検査に卵管造影検査がありますが、
その検査において、卵管の閉塞が見つかることがあります。
“卵管性不妊症”と定義されますが、不妊症の31%を占めるとされています。
妊娠成立において卵管は、下記の様に関わっています。
① 精子が子宮を通り、卵管内を泳いで卵管采まで進む
② 排卵後の卵子と精子が受精して、受精卵となって卵管采から子宮内膜に向けて動く
このように、配偶子が卵管を1往復することが妊娠成立の必須条件となりますので、
その卵管が両側閉塞している場合は、タイミング(自然妊娠)、人工授精といった一般不妊治療での妊娠が難しくなってしまいます。
片側の卵管閉塞の場合も、一般不妊治療において妊娠率が顕著に下がってしまいます。
その理由としては、①閉塞側の排卵はほぼ妊娠が成立しない、
もしくは②非閉塞側も狭窄や機能低下していることがある、ためです。
卵管閉塞の原因
卵管が閉塞する原因は、
・先天的 (うまれつき)
・子宮内膜症により、卵管周囲に癒着を起こした
・クラミジアを代表とした感染症により、腹腔内炎症を起こしたことによる癒着
・稀ではあるが、子宮筋腫による卵管圧排
などが考えられます。
卵管閉塞が判明した場合の妊娠手段
卵管性不妊における妊娠手段は2つあります。
①卵管閉塞を解除して、一般不妊治療
②卵管閉塞はそのままにしてART治療(高度不妊治療)へステップアップ
それぞれの方法について、内容と、方針選択の際に考えるべきことを記載していきます。
①卵管閉塞を解除する方法 = 卵管鏡下卵管形成術(FT)
卵管閉塞を解除するためには、経腟、経子宮的に卵管内部からアプローチすることが必要になります。
この卵管内腔から閉塞を解除する処置を卵管鏡下卵管形成術といい、低侵襲で体への負担が少なく、
そして卵管が開通すれば、タイミングや人工授精といった一般不妊治療、自然に近い妊娠方法がとれることがこの手段の大きなメリットです。
この方法を選択するのが好ましい方は、
・年齢的にお若い年代 (目安ですが38、39歳以下)
女性年齢が40歳以上の場合は、卵管が開通したとしても一般治療での妊娠率は低くなってしまいます。
30歳代中盤以下の方は、卵管さえ開通すれば、一般不妊治療で結果が出る方が多いので
向いている治療法といえます。
半年前後の経過で妊娠へ至れなかった場合はARTに進めばよいわけで、
その時間経過によるART治療の成績低下はその年代であれば大きくはないと考えられます。
・ART治療は選択肢にないカップル
高度な不妊治療はしたくないという方は、年齢関わらず(生殖年齢であれば) FTを視野にいれるとよいでしょう。
② ART治療 (体外受精・顕微授精)
ART治療は卵管を経由しない妊娠方法ですので、最終手段としてARTを考慮すべきです。
FT含め一般治療に費やす時間による加齢デメリットが強く出てしまう40歳前後以上の年齢の場合は、ARTに進んだ方が得策かもしれません。 あくまでも一般的価値観での意見ですので、最終的にはカップル毎に決定していただくのが良いと思います。
卵管鏡下卵管形成術 (FT) の概説、特徴
卵管閉塞を解除し自然妊娠を可能にする
卵管鏡下卵管形成手術(FT:Falloposcopic Tuboplasty)
について概説していきましょう。
この手技は、日本発祥の技術です。
卵管の閉塞、狭窄、機能異常により、
精子や受精卵(胚)が上手く通過することができない
『卵管性不妊症』 を対象とした内視鏡治療です。
(※ページ内画像は、テルモ社ホームページより引用)
当手技の特徴をいくつか挙げていきます。
①身体への侵襲が少ない
皮膚を切開する必要がなく、子宮からカテーテルを通していくだけですので、非常に侵襲が低い手技です。
両側卵管への処置を行っても20分前後で終了します。
静脈麻酔を使用すれば痛みもありませんので、ストレスなく処置を受けることができます。
日帰りで処置を行う施設がほとんどでしょう。
また、何よりもART治療に進まなくてもよいというのが、身体への負担を減らすことになるでしょう。
②妊娠率がかなり上がる
報告によれば卵管開通率は96%で、約3割のカップルが一般不妊治療で妊娠した。
その妊娠率はART治療に匹敵する成績であり、
その妊娠例の多くは6か月から1年未満で成立するといわれています。
(日本受精着床学会誌. 2010)
卵管造影検査後に妊娠率が上がるということをよく耳にすると思いますが、
それは造影剤により卵管の通過性がやや改善するからと考えられます。
このFTは、それの究極版ともいえる処置です。
③費用効果が優れている。 保険適応内の不妊治療である
1回のFTにより自然に近い妊娠方法で、ART治療とほぼ同等の成績を得られるので非常にコスパに優れています。
保険適応なので、自己負担が少なくすむ治療方法です。
具体的な費用としましては、収入により規定される保険診療上限額になるでしょう。
限度額適応認定証を事前に取得することで、窓口負担を減らすことができますので
事前に健康保険窓口で申請をすませておきましょう。
④再度閉塞する可能性がある
FT後の一般不妊治療による妊娠例は、ほとんどが処置後1年以内に成立します。
再度卵管が閉塞や狭窄してしまうのではないかと推測されていますが、
そもそも卵管閉塞していない方でも一般不妊治療での妊娠例のほとんどは1年以内です。
タイミング、人工授精などの一般不妊治療推奨期間は世界的統一見解として
最大で6周期(約6か月)ずつになりますので、
1年以上一般不妊治療を続けることは推奨されません。
一定期間結果が伴わなければ、卵管再閉塞、もしくは一般不妊治療では妊娠できない他の要因
があると推測されART治療へ移行することをお勧めします。
⑤実施可能施設が少ない
日本固有の技術であるFTですが、国内でも実施可能施設は非常に少ないです。
しっかりと件数をこなしている施設は各都道府県に1施設あるかないかでしょう。(首都圏を除けば)
内視鏡に長けた医師か、実績のある施設で行っていただくことをお勧めします。
※つくば木場公園クリニックでは現在器具が揃っておらずFT実施ができません。
処置日当日のみ千葉県市川市の吉岡産婦人科医院にて行っております。
(つくば木場公園クリニックから車で1時間弱)
⑥子宮形態、卵管閉塞部位により処置が困難な場合がある
FTは極細の内視鏡を使用し、カテーテルも既定のものしかないため、条件によっては施行が難しい場合があります。
・子宮後屈が強い場合、子宮奇形などがある場合
・卵管末端(膨大部)に閉塞が疑われる場合
・重症の内膜症が想定される場合
上記の場合はFT実施をお勧めしない場合があります。
担当医師により判断が別れますので、担当医師と相談をしましょう。