EMMA/ALICE検査は、
子宮内膜組織を採取し、子宮内細菌叢(子宮内フローラ)を測定する検査です。
妊娠成立において、子宮内細菌叢(子宮内フローラ)が正常であることの重要性が分かってきています。
子宮内を善玉菌(乳酸菌)がほとんどを占めることが理想で、最も妊娠率が高いと報告されています。逆に悪玉菌が増えていると、妊娠率低下や、妊娠継続率の低下を引き起こすとされています。

本検査は、着床不全に関する検査の一つであり、また着床不全検査の中で最も大切と考えられる検査です。
胚移植を実施しても中々妊娠できない方や、慢性子宮内膜炎(=妊娠率低下に寄与する)が疑われる方は、是非行ったほうが良い検査です。
本項では、周期の流れ、費用やよくある質問について掲載をしていきます。

EMMA/ALICE検査のスケジュール、費用など

EMMA/ALICE検査周期について、まずは簡単にまとめておきます。

・来院回数は順調であれば3回程度 (1卵胞発育確認・2 検査当日・3 結果説明 ) 
・日程の流動性は高く、指定日前後で来院できれば検査を組むことが可能
・費用は 6~7万円

黄体期(排卵後)に子宮内膜組織を採取するだけですので、月経が順調にきている方は検査を組むことは比較的容易です。
詳しくスケジュールの流れを説明していきます。

(月経初旬)
月経が順調な方は来院不要です。
月経不順が軽度な方は、卵胞発育を促すための排卵誘発剤を処方します。
月経不順が高度な方は、ホルモン補充周期で行いますので、女性ホルモン剤を処方します。

① 卵胞チェック
排卵前後のあたりにご来院いただきます。
ある程度大きな卵胞がある、もしくは排卵していることが確認できれば、
EMMA/ALICE検査の日程を決めていきます。
(ホルモン補充周期の場合は、子宮内膜の肥厚があれば検査日程を確定できます。)

② 検査当日
EMMA/ALICE検査当日は、同意書をお預かりし、内診室で内膜組織を採取します。
同意書は2通(記載は3か所要)を一読の上、ご記入いただき医師へご提出下さい。
先進医療(自費診療)となり約60000円の費用がかかります。

③ 検査結果報告
採取検体はスペインの検査会社に輸送され、解析されます。
結果がでるまでに少なくとも3週間はかかりますので、
検査から4週間前後で結果説明の日程を組ませていただきます。
結果内容により次の動きが大きく変わってきます。

EMMA/ALICE検査の結果判定後のスケジュール
   -検査後いつになったら胚移植ができるのか-

結果・方針としては、下記の3つに分類されます。
①良好 → 治療不要 
②要改善 → 治療必要  
③不良 → 治療を行った後に再検査が推奨

①結果が良好
最短のタイミングで胚移植を行っていきます。
月経状況によりますが、翌周期には胚移植を行うことはできます。

②結果が要改善
善玉菌量が低下している、悪玉菌はいても少量である。などの結果の場合です。
改善が必要ではあるが、菌バランスがそこまで悪くない状況になります。
約2(~4)週間の乳酸菌を増やす治療を経て、胚移植を行っていきます。
約1か月後には胚移植を迎えることができますので、月経状況にもよりますが、
翌周期には胚移植を行うことはできることが多いです。
治療内容:乳酸菌膣剤の使用

③結果が不良
悪玉菌が増えてしまっている場合はこちらのパターンになります。
約2~4週間の治療期間を経て、再度EMMA/ALICE検査を行っていきます。
月経状況にもよりますが、翌周期には再検査を行うことが多いです。
再検査となると、どうしようかと迷ってしまうと思いますので、
次項で詳細を説明します。

EMMA/ALICE検査で結果が不良だった場合
再検査について

悪玉菌が増えている場合(=当然乳酸菌はその分減っている状態・上述の③)は、
まず抗生剤で悪玉菌を除去し、空いたスペースに乳酸菌を増やすことが必要となります。

推奨される治療法を行っても、奏功しない可能性があるため再検査が推奨されます。
奏功しないケースとしては下記のような場合があります。
・推奨された抗生剤では悪玉菌が根絶できない
・いなくなった悪玉菌のスペースに、別の悪玉菌が増えてしまう
・悪玉菌は減ったが、乳酸菌が上手く増えなかった
上記の状況では、妊娠率が低下してしまうため、再検査して再度有効な治療法検討をすべきです。

再検査推奨はあくまでも検査会社が、これまでの多くの検査・治療後の膨大なデータから判断したものです。検査結果から細菌叢を改善する可能性が高い方法が提案されますが、この改善策を行っても良好な細菌叢にならない可能性が十分にある場合に再検査が推奨されます。

当院において、再検査を推奨され2回目のEMMA/ALICE検査の行った結果をお伝えします。
約75%の方は不良、もしくは良好とはいえない状況で、
残り約25%の方が、良好な結果(=乳酸菌が十分に増えている)でした。
再検査を推奨された方の3/4は、良好な細菌叢には至らっておらず、
再度治療法の検討が必要であるというデータでした。
再検査しなくても大丈夫だったという方針での勝率は低いため、
2回目の再検査は、前向きに検討いただいた方が良いと考えています。

EMMA/ALICE検査 よくある質問

検査中の痛みはどの程度ありますか?

カテーテル挿入時と、組織を吸引採取する際に痛みがでます。

カテーテル挿入が容易な場合は、処置にかかる時間は1分程度と短く、
強い痛みを感じる方は少ないです。
カテーテル挿入が困難な場合は、子宮出口を拡張する作業が必要となり、
処置に5分程度かかり、やや強めの痛みを感じる場合があります。
ただ、痛みのため検査実施ができないような経験はこれまでありません。

挿入が困難かどうかは事前予測が難しいです。
過度に力を入れてしまうことで、カテーテル挿入が難しくなりますので、
リラックスして検査に臨みましょう。
鎮痛薬は、検査前もしくは直後に使用していただいても問題ありません。
ご持参いただくか、もしくは処方薬をお渡しすることが可能です。

検査後に仕事はできますか?

検査後も痛みが続くようなことは稀です。
しかし、検査により子宮に刺激が加わるため、月経痛様の鈍痛がある程度持続することはあります。鎮痛薬の使用により改善がみられることがほとんどです。
検査後の体調は人によりそれぞれですので、
検査当日は休みが取れるのでしたらその方が安心ですが、
デスクワーク等のお仕事でしたら、基本的に問題なくできる方がほとんどです。

乳酸菌膣製剤の使用が勧められました。
使用方法について教えてください。
また、使用終了後に再度使うべきでしょうか?

当院で推奨している乳酸菌膣剤・ラクトサプリは、含有菌数、含有菌種から日本人女性に最も合うと考え導入しております。
一度にそれ以上継続するメリットは確認されていないため、一袋で使い切り終了としております。
その後に一定期間をあいた場合に再度使用するべきかにつきましては、再度EMMA/ALICE検査をしなければ判別がつきません。
しかし、検査の費用、期間などを考慮しますと、度々再検査をすることは現実的とは思えません。
一定期間を経ることで、子宮内細菌叢が理想的状況から悪化する可能性は否定できませんので、初回仕様から半年‐1年以上経過してから再使用を念のため希望される方は医師にお伝えください。
子宮内細菌叢が理想的状況(乳酸菌が多い)が継続できている場合は、
ラクトサプリを再度使うことのメリットがない可能性もありますが、
使いすぎることでのマイナスは無いと考えられます。

検査結果でULTRALOW(菌量が少ない)でした。
どういう意味ですか?

細菌由来のDNA量が少ないという結果になりますので、無菌に近い状況になります。
除去すべき悪玉菌量が少ないのは良いことですが、善玉菌が少ないことで妊娠率が下がるという報告がでているため、善玉菌である乳酸菌を増やす治療を行ってから胚移植に臨みましょう。

ERA検査と同時行うことはできますか

推奨していません。
ERA検査は着床に好ましい時期が、標準時期とずれがないかをみる検査です。EMMA/ALICE検査とERA検査を同時に行うことをTRIO検査と呼称し、以前は時間短縮のため通常は同時に行われていました。ただ近年の報告において、EMMA/ALICE検査の異常、つまり子宮内細菌叢の異常がある場合、ERA検査の結果にも影響を及ぼすことが指摘されています。もし細菌叢に異常があった場合は妊娠率が低下するため、抗生剤や乳酸菌製剤を使用し細菌叢を適正な状況に治していきます。そうしますと、細菌叢異常の状況で行ったERA検査の結果の信憑性が落ちてしまいます。ERA検査結果を信頼することで、逆に着床率が低い時期に胚移植を行ってしまう危険性がでてしまいます。
ERA検査で異常が見つかる頻度は低く、不妊治療序盤で標準的に行うべき検査ではないと考えています。
これらの理由から当院では、まずはEMMA/ALICE検査を序盤で行い、細菌叢が正常化した状況で胚移植を行い、それでも着床しない場合にERA検査を推奨しています。

EMMA/ALICE検査は2つの検査のようですが、分けてできるのでしょうか。

分けて行うことはできません。
EMMA : 子宮内膜マイクロバイオーム検査 
ALICE:  感染性慢性子宮内膜炎検査
当該検査は子宮内膜の細菌叢を解析する一つの検査であり、
結果報告を2つの項目(EMMAとALICE)に分けてなされています。
2つセットで行う検査とご理解下さい。

検査結果から再検査を推奨されたが、やらなくてもいいんでしょうか?

1回目の検査結果から推奨される治療を行っても、
良好な細菌叢に至っていない場合、妊娠率は低下する可能性があります。
上述のように再検査を推奨しますが、最終的には自己判断になります。