妊娠しますと、身体の内部から大きく変化し、普段体験したことのない症状も自覚することがあります。
慌てて誤った対処をしないように、どんなことが起きうるかをご理解しておいてください。

このページのまとめ

1. 妊娠初期に起こりやすいこと : 性器出血 腹部症状 つわり など 

2. 流産について

性器出血について

「出血=流産」と連想されてしまい、驚かれてしまう方が多いと思いますが、 
妊娠初期の出血は高頻度にみられる症状で、約7割の方が経験します。

妊娠初期の出血のメカニズムは確定的ではありませんが、
子宮に胎盤組織が侵入していく過程でみられると考えられます。

少量から中等量の出血の場合、ほとんどは数日から数週間の経過で落ち着いていきます。
異常ではないので、運動などは行わず、基本的に安静目な生活を心がけて様子をみていきましょう。

大量出血(生理の多い日以上の量)がみられる場合は、流産につながる出血の可能性があります。
妊娠初期の流産のほとんどは胎児側の要因(染色体異常などで育つことができないなど)なので、
治療により止めたり、改善できるものではありません。
そのため、流産してしまわないかを見守っていくことが中心になります。
基本的には予定通りの健診予定日にご来院ください。
ご心配であれば診療時間内にクリニックへご相談下さい。

※妊娠中期・後期の出血は、別機序を考慮する必要がありますので、周産期施設の指示に従ってご相談下さい。

腹部痛、下腹部膨満感

軽い腹痛、鼠径部痛、張り感なども妊娠初期によく自覚します。
妊娠に伴い、子宮内部も変化しますし、子宮自体も徐々に大きく、
血流を増していきますので、それに伴う症状がでることがあります。

基本的には安静を心がけていただき、症状が増悪しなければ問題ありません。
多めの出血とともに腹痛が増強してきた場合は流産の徴候の場合がありますが、
上述の出血の項のように治療により流産を回避することは難しいです。
発熱(38度以上)を伴う場合は、感染などが示唆されますので、診療時間内にクリニックへご相談下さい。

逆に、妊娠したのに何も変化がない、お腹に症状が無いことを心配する人もいますが、
不安になる必要は勿論ありません。

※新鮮胚移植後の妊娠成立の場合、妊娠後に卵巣が腫大しやすく、下腹部痛や下腹部膨満感が強く出現する事があります。
症状がある場合は、運動などは控えるようにしてください。
症状が強く、酷くなってくる場合は、診察にいらしてください。

流産について

ショックな内容ではありますが、人間には流産が多いことを知っておいてください。
ある研究では避妊をしていない月経順調な女性を対象に月経開始予定日頃に尿妊娠反応検査をしたところ、
約40%の人が妊娠反応陽性となったが、その後陽性者の多くでは月経が始まったそうです。
このように人は妊娠しても知らぬ間に高い確率で初期流産をしているのです。

初期流産の原因はほとんどが受精卵(胚)の異常と考えられており、
染色体異常などにより赤ちゃんが育つことができず自然淘汰されるためと考えられています。
それゆえに、流産をせず生まれてくる赤ちゃんのほとんどが健常であるわけです。

初期流産は一定確率で起こりうる、回避ができない現象なので、
流産に至ってしまったとしても、自分の何がいけなかったのだろうと悩まないようにしましょう。

妊娠中は便秘になりやすい

妊娠中は普段より、便秘気味になります。
ひどい便秘になりますと、腹痛や張りの原因となります。
適宜対策を講じておきましょう。

一般的な便秘対策
・水分をやや多めに取りましょう。
・根菜、豆類、海藻、寒天など繊維質の多い食事を心がけましょう。
・乳酸菌を補充し腸内細菌のバランスをよくしましょう。

上記のような対策で治らない時は、医院で早めに緩下剤を処方してもらうことも大切です。
・ひどい便秘であれば緩下剤を使用しましょう。
緩下剤としては、マグネシウム製剤は妊娠中使用の安全性が高い薬剤です。
かかりつけ医で処方をしてもらってください。
(申し訳ありませんが、当院では在庫がなく処方ができません。)

つわり(妊娠悪阻) について

妊娠初期にはホルモンの変化によりつわり(悪阻)といわれる嘔気がでる方がいます。 
個人差はありますが妊娠5~10週ころにみられる場合が多いです。
基本的には妊娠12週頃 (遅くとも16週迄) には改善する人が多いです。

嗜好の変化により匂いに敏感になることがあります。
栄養バランスはさておき、食べれるもの、飲めるものを摂取するようにしましょう。
固形物が無理ならゼリーやジュース、スポーツ飲料など、少なくとも水分は取れるとよいでしょう。

お腹がすくと、嘔気が出る人もいますので、ご自身のよいタイミング、量で無理せず摂取しましょう。
一度に量が取れなければ、少量ずつでもOKです。

※つわりは半数ほどの方が経験される症状です。
つわりがないから心配です、という質問をよく受けますが、
約半数の方はつわりを自覚しませんので心配いりません。
また、急につわりがなくなった場合も心配はせず、次回の健診で成長を確認していきましょう。

※つわりが非常に悪化してしまう場合
重症妊娠悪阻となる方が1%弱いるといわれています。
強い飢餓状態となり、そのまま放置してしまうと、母体合併症(血栓症や、ウェルニッケ脳症等) を引き起こしたりしますし、胎児にとっても良い環境ではありません。
体重が顕著に減ってしまう、水分さえ全く取れなくなってしまった場合は、
産科施設にて適宜点滴を受けていただいたほうがよいので医院で相談しましょう。