近年、不妊治療領域において「子宮内環境」をいかに最適化するかが、妊娠率向上の重要な鍵として注目されている。その中でも、子宮内細菌叢(マイクロバイオーム)において、乳酸菌(Lactobacillus属)が大部分を占めることで妊娠率が最大限に高まるという報告が数多くなされている。
・子宮内細菌叢の検査方法(EMMA/ALICE検査) について
・子宮内に乳酸菌が多いことの臨床的意義について (現在作成中)
この項では、国内で入手可能な乳酸菌腟剤を紹介・比較していきます。
乳酸菌腟錠の紹介
経口の乳酸菌製剤は様々な商品が販売されているが、妊娠率を上げるためには腸内ではなく、基本的に子宮内の乳酸菌を増やす必要があります。
乳酸菌腟錠は、まだ販売されている商品種類が少なく、また医療施設へ受診しなければ入手できない場合もあります。現在、本邦で入手可能な3種類の乳酸菌腟錠のリストと比較をしていきます。

各商品の特徴、費用、一般購入可能かなどの情報のまとめです。
ただどの商品がよいかは、商品ごとの臨床データ(妊娠率等)も出ておらずはっきりしたことは言えません。
現情報から各製品の説明を補足していきます。
どの製品にしても使用する際は、使用意義を理解し、製品添付情報の注意点を遵守すること、
また未承認薬のため下記使用上の注意点もご確認いただいてから使用するようにして下さい。
①ラクトサプリ
ソフト形状タイプが腟錠として使用されることが多いです。
菌種もバランスよく、菌数が多く、当クリニックでは1stチョイスで使用しています。
一般購入ができず、クリニックを通して購入する必要があります。
使用を希望される場合は、クリニックにてご相談下さい。
② ラクトフローラフォルテ
歴史が一番ある商品です。一般購入もできるため、手に入れやすい商品です。
調べた範囲では、含有菌数などは確認できませんでした。
③ ユテラ
医療用サプリを監修する会社の製品です。
腸内容からでなく膣内から分離した乳酸菌製剤であること、
菌種もL. crispatusだけでなく、L. Jensenii(重要性は後述)も含まれており、使用価値が高い製品と考えます。
一般購入が可能な製品なので、自然妊娠トライ中の方、費用的に抑えたい方、ラクトサプリで乳酸菌が上手く増えなかった方(EMMA/ALICE検査を2回以上実施した方限定の情報)などに向けて
お勧めできる製品です。
購入希望の方は、こちらから進みますと割引での購入が可能です。
乳酸菌の菌種について
乳酸菌と一口にいっても、乳酸菌属の中でいくつかの株種が存在し、それぞれ存在意義も異なる可能性があります。現時点で、最も重要と考えられている乳酸菌株種はL. crispatusとされており、この菌種は全商品で含まれています。(割合は商品により異なる。)
逆に乳酸菌でもL.inersという株種は、子宮内にいない方がよい可能性が指摘されています。(Petrova MI et al. Front Physiol. 2015 25;6:81.)
この悪者かもしれない乳酸菌 L.inersはアジア人に優位に多く認める菌種であり、これを抑え込むために重要と報告されている菌種がL. Jenseniiです。(M.T.et al Genome Biol .2022 23,66)
使用方法・注意点
使用を希望される場合は、以下の注意点を守り使用しましょう。
・乳酸菌腟錠は保険適応外のため自費での購入となります。
・未承認薬の位置づけとなり、必要と考えられる方のみが使用するべき。
・臨床使用の経験が浅く、予想しない副作用が起こる可能性が否定できない。
・使用して副作用がでる、もしくは体に合わない場合は即座に使用を中止しましょう。
基本成分は乳酸菌ですし、ある程度使用されてきている製品なので基本的に危険性はほぼないと考えられますが、使用していて副作用が生じた場合は、中止し医師へ相談をしましょう。