体重と妊娠の関係

☆ 適正体重
体重については、 痩せすぎ、 もしくは太りすぎである場合に妊娠率が低下します。
また、妊娠した後の胎児の成長、出産までの母児の危険性、出産後のお子さんの体質などにも影響を及ぼします。

BMI(Body Mass Index)は22が理想体重とされていますが、大きく外れなければ妊娠率は低下しないと
考えられています。 日本肥満学会の基準であれば、BMI18.5~25が普通体重と定義されています。
この範疇から外れる方は、普通体重に近づけられるよう生活習慣を少しでも良いので変更していくとよいと
考えられます。

BMI = 体重kg ÷ (身長m)2  
太りすぎず、瘦せすぎずが一番よい体型です。

妊娠前の夫婦の体質、妊娠中の妊婦の体質が、胎児の体質決定に関与することが分かってきています。
例えば、痩せている妊婦さんから出生した子供は、成人になってからメタボリックシンドロームのリスクが高くなるなど、
産まれてくる子供のために、標準的な体格を維持することが大事になってきます。
簡単に、体格によると妊婦、出生子への影響をまとめると下記の様になります。

痩せすぎている女性が妊娠した場合の母児の危険性
   妊婦 : 早産、低出生体重児 → 児にとって未熟児、産後全身状態不良、将来の生活習慣病リスク増加
   出生子 : 肥満、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームの発症リスク増加

太り過ぎている女性が妊娠した場合の母児の危険性
   妊婦 : 妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、巨大児、帝王切開分娩のリスク増加 
            →児にとっては未熟児、産後全身状態不良のリスク増加
   出生子 : 体質変化が起こるか、起こらないかはまだ不明


詳細はこちらから体格と周産期リスク、DoHaD仮説などをお読みください。

喫煙と妊娠の関係

喫煙と不妊の関係については米国生殖医学会(ASRM)より見解がだされています。
米国の生殖医療専門医が集まって出している見解になりますので、医学的根拠は非常に強い内容です。
喫煙者は非喫煙者に対し
 ・オッズ比1.60で不妊症になる確率が高い。
 ・閉経が1~4年早い (=卵巣機能低下が早くなる)。
 ・異所性妊娠(子宮外妊娠)、 流産のリスクが上昇する。
 ・ART治療において、 非喫煙者の2倍の周期数を要する。
                               (Fertil Steril 2018; 110: 611)
      
受動喫煙も、喫煙者と同等のリスクをもつとされます。 

妊娠後も喫煙は避けなければいけません。
・ヘビースモーカーは、非喫煙者と比べ流産率が約2倍に上昇します。 受動喫煙は約1.7倍に上昇します。
                              (Am J Obstet Gynecol. 2016)
・その他にも早産、前置胎盤、妊娠高血圧症候群、胎児先天奇形発生率の上昇など、胎児へ影響する事象も含め危険性が多数報告されています。                   (Obstet Gynecol. 1999 / Hypertens Res 2019)

・禁煙補助剤であるニコチンパッチは妊婦・授乳中は使用禁止です。

喫煙は明らかに妊娠機会を逸する原因となります。
母体だけでなく、胎児生命にも危険を及ぼします。
妊娠希望の場合は禁煙する以外ないと思いましょう。

加熱式たばこ 電子たばこ の妊娠への影響

従来式のたばこの他にも、加熱式たばこ(IQOSなど)や電子たばこ(VAPE)などがあると思いますが、
それらにと妊娠率との関係はどうなっているでしょうか。

電子たばこ(VAPE)
男性精子に対しては明らかな毒性があることが多数報告されている反面、女性は観察が難しく強い証拠はまだしっかりでてはいません。ただ、動物実験では卵巣機能低下、妊娠率低下を示唆する報告がみられています。また、その子孫への影響として体重、身長低下傾向もみられたとしています。  (J.Endocr. Soc. 2019)     
電子たばこは、500以上の販売ブランドがあり、商品により組成も少しずつ違うようではありますが、一貫して含まれている成分としてはグリコール、ニコチンで、その他様々な毒素が含まれており健康被害が確認されてきています。
一般的な健康被害の可能性としては、主成分であるグリコールは本来無毒な成分ではあるが、加熱により有毒な成分に変化する。鉛、銅、カドミウム、アルミニウム、水銀などが含まれることがある。カルボニルは強い刺激性をもち非常に有害である。 
一方で妊娠率に影響する成分としては、 ニコチン、ホルムアルデヒド、銅、カドミウム、VOCなどあげられます。これらの成分は生殖毒性、卵子成熟から胚発生に悪影響、着床率、妊娠率の低下が報告されています。
結論として従来の紙たばこと同等の一般健康リスクを伴い、不妊への影響も強く考慮すべきであろうとしめています。  
                       (Life. 2013 / Prev.Med. 2014) 

加熱式たばこ(IQOSなど)
まだその歴史が浅く、しっかりとした研究結果は報告されていません。
しかし、加熱式たばこの主流煙には、紙たばこと同レベルのニコチンや揮発性化合物(アクロレイン、ホルムアルデヒド)、その他有害物質が含まれています。 加熱式たばこだから大丈夫だろう、とは当然ならないと考えられます。


ストレスと妊娠率

妊娠しようと必要な事項を努力することはとても大切ですが、
生真面目な方ほど、頑張りすぎてしまうという傾向もあると思われます。
医療者から言われた通りに今日も頑張ってタイミング(性交渉)とらなきゃとか、
これもあれもやらなければという心理状態になって、
妊活が辛くなってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

妊娠しようとすることに伴うストレスにより、性的満足感、性交頻度が低下し、妊娠率が低下する可能性が報告されています。 性的満足度や性交頻度は、厳密なスケジュールに従っている場合ほど悪化するとしています。(Lenzi A.Stress, sexual dysfunctions, and male infertility.J Endocrinol Invest. 2003; 26: 72-76)

男女とも義務的なsexでは満足度があがらず、不妊治療を継続することが苦になってしまいます。逆に、性的満足度が高いことにより、女性では卵管の精子輸送能力が向上したり、男性では精液射出量を増えることが報告されており、妊娠にとっては精神的な要素も重要であるといえます。

他にも、誤った情報を信じ込んでしまい、間違った方向に努力をしてストレスをためるのは、
百害あって一利なし、でしょう。

過度に努力し過ぎず、気持ちに余裕や遊びを持ち、
無理な時は無理と割り切ったり、今回はしょうがないと妥協することも大切であると思われます。
カップルにより事情は様々ですので、無理のない範囲で気持ちのコントロールをしていただけると良いと考えます。