この項のまとめ

・PQQは高い抗酸化作用をもつ成分です。
・PQQサプリ使用により、
 精子内活性酸素の低減をもたらし、精子運動性向上、良好形態率向上、
 ミトコンドリア機能向上、受精率向上をもたらす可能性が示唆されている。

妊娠率を高める可能性がある新たなサプリメントとして、
PQQ(プロロキノリンキノン)が注目され始めています。
このページでは、不妊治療に対して PQQがどのような根拠で勧められるのか、
どのような場合に摂取をすべきかについてまとめていきます。

PQQとは

PQQはビタミン用の補酵素で、1979年に発見された酸化還元酵素の補酵素として働く栄養素です。
ヒト体内では主に母乳に多く含まれます。

• 納豆、豆腐、キウイ、ピーマン、パセリ、緑茶などの食品に含まれるが、食事から摂取できる量は限られるため、摂取するためにはサプリメントが一般的である。

・論文報告として、
PQQ摂取により、ミトコンドリア機能改善によるエネルギー代謝改善、
抗酸化作用、その他にも認知機能向上など様々な健康効果が報告されています。
下記に医学論文の一部を列挙します。

抗酸化作用         1.Karen R,Biomolecules 2021.    2.Melissa Mitri, Nutrition 2024.
ミトコンドリア機能改善   1.Nalbant MA, Cell Mol Biol 2023.   2. Jonscher KR, Biomolecules 2021.
認知機能向上        1.Melissa Mitri, Nutrition 2024.
心血管系イベントリスク改善 1.Michael T, Neurology 2016 .

このように様々な効果が報告されているPQQですが、
この中で不妊症改善に関わる項目としては
主に、抗酸化作用、そしてミトコンドリア機能改善が関わるのではと予想します。
次の項で、不妊治療に併用するべき根拠となるデータを供覧します。

PQQによる妊娠率向上の医学的データ

PQQはまだ新しい栄養素であり、ヒトに対してのデータはほとんどありません。
ただ、動物での研究としては妊娠率をあげるデータが出てきています。
この項でご紹介するデータは、
広島大学・大学院統合生命科学研究科・生殖生物学研究室データをお借りして供覧しています。
当該研究室は、生殖医療分野において非常に先進的な研究を行ってらっしゃることで有名です。
私も学会等では医学発表をよく拝聴していて注目させていただいていました。
他施設が未着手の分野をどんどんと切り開いて、臨床にも活かせる新しい発明を多数報告してらっしゃる研究室です。

報告① ブタ精子を通常培養液、CoQ10添加培養液、PQQ添加培養液で数時間培養し、
    精子の直線運動速度、精子内ROS(活性酸素)活性について解析した。

・抗酸化剤として既知であるCoQ10添加と同様に、
直線運動速度はPQQを添加することで速く保たれた。(左図)
・精子は通常培養液で放置することでROSが上昇したが、
PQQを添加した群で最もROS上昇が軽減された。(右図)

報告② ブタ精子を通常培養液、CoQ10添加培養液、PQQ添加培養液で数時間培養し、
    精子のミトコンドリア活性、ミトコンドリアDNAを解析した。

・精子は通常培養液で放置することでミトコンドリア活性が低下した。
PQQを添加した群で最もミトコンドリア活性の低下が軽減された。 (左図)
・精子は通常培養液で放置することでミトコンドリアDNAの正常性は顕著に低下した。
PQQを添加した群で最もミトコンドリアDNA正常性が維持された。 (右図)
精子とミトコンドリアの関係については次項で補足説明していますので、ご参照下さい

報告③ 若齢マウスにPQQを投与し、精子の直進運動性を解析した。

若齢マウスにPQQを投与することで精子の直進運動性は向上した。

報告④ ライディッヒ細胞を機能不全にした若齢マウス(KO群)に、PQQを投与して様々な解析を行った。

※ライディッヒ細胞:精巣内に存在し、主に男性ホルモン産生を行う。
 この細胞が機能しないと、男性ホルモン不足や生殖能力が低下する。

・KO群では男性ホルモン値が下がったが、PQQ投与により男性ホルモン値は正常値まで改善した。(上左図)
・KO群では精子奇形率が高度に上昇したが、PQQ投与により精子奇形率は改善した。(上中図)
・KO群では交尾率が顕著に低下したが、PQQ投与により交尾率が上昇した。(上右図)

・KO群では交尾後の体内受精率は顕著に低下したが、PQQ投与により体内受精率が上昇した。(下左図)
・KO群では体外受精における受精率は顕著に低下したが、PQQ投与により体外受精における受精率が上昇した。(下右図)

精子とミトコンドリアの関係について

研究内容にミトコンドリアという細胞小器官の名前がよくでてきました。
精子にとってミトコンドリアがとても大切であるという説明を少し入れておきます。

                     Barrett :Journal of Biology 2009 より

精子は図の様に左から 頭部、中核部、尾部 の3つの部位に分かれます。
頭部:核が存在しDNA情報を保持する
中核部 (赤丸):ミトコンドリアを豊富に含み、エネルギー産生を行う
尾部:推進運動をつかさどる

受精卵となるため精子は卵子を目指して動いていきます。
良い受精卵となるためには頭部にもつDNA情報が大切ですが、
目的地にたどり着くためには早く、直線的に動くことが必要です。
この高速直線運動を支えるために最も活躍するのが、精子中核部にあるミトコンドリアです。

ミトコンドリアの主な役割は、細胞のエネルギー源であるATPを産生する事です。
中核部には多数のミトコンドリアが密集しており、らせん状に巻き付いてミトコンドリア鞘とも呼ばれます。
精子が動くために必要な大量のエネルギーは、このミトコンドリア鞘で産生されます。

精子は独立した細胞であり、手持ちのエネルギーを使い果たしたら動けなくなります。
自然妊娠においては、優秀な中核部、尾部をもつ精子のみが卵子に到達する可能性をもち、
かつ頭部に優秀な受精能力かつDNAをもっていた場合のみ良好胚となり妊娠が成立するわけですね。

話を戻しますが、精子が直線的に動くためには中核部(ミトコンドリア鞘)の機能が重要で、
エネルギー産生の際に発生するROS活性酸素は、精子の運動性を低下させます。
抗酸化物質によるミトコンドリアDNA保護により、精子直線運動性は高いまま維持されます。
精子が元気に動きる続けるためには、抗酸化作用をもった物質が重要ということですね。

PQQと男性不妊治療への応用

前述のように基礎研究において、PQQは不妊症に対しての好影響を期待できる結果が出ています。
研究結果をまとめますと、下記のような結果となります。
①抗酸化作用においては、既知のCoQ10と同等以上の結果
②精子ミトコンドリア機能向上
③精子運動性の向上、形態良好精子の増加
④受精率の向上

ヒトにおいても同様に好影響を与える可能性が高い栄養素かと考えます。
上述の研究結果をふまえますと、不妊症で悩む方は使っておいて損はないと考えますが、
特にどのような男性に推奨されるかをまとめますと、
・ 精液検査が不良だった方
・ ART治療において、受精率が不良であった方
・ ART治療において、胚培養結果が不良であった方
このような方は特に摂取することが推奨であるかと考えます。

メネビットなど、その他のサプリメントを使っている場合どうすればいいですか?

PROFAセルアライブEXは、主成分がPQQであり強い抗酸化作用をもちますが、
その他にはマカ以外の栄養素はほぼ含まれません。
当サイトで男性不妊に対して、次点として推奨しているメネビットは、
抗酸化作用を持つ別成分がいくつか入っており、
併用することで抗酸化作用が強すぎになる可能性はあります。
このことがプラスに働くのか、もしくはマイナスに働くのかについては、
データがなく、また恐らく人によると思われます。
(多くの場合は問題ないと考えられますが)
そのため、その他の男性不妊サプリメントと併用することは禁忌ではないですが、
費用的なことも鑑みますと基本的にはPQQのみの摂取でよいかと考えます。

PQQについてもう少し詳しく教えてください。

PQQに関する詳細な情報はロート製薬株式会社のHPをご確認下さい。