不妊治療開始前に、検査をしておいた方が好ましい項目がありますが、その多くが保険適応外(=自費診療)となってしまいます。下記の採血検査と超音波下子宮卵管造影が自費診療検査となります。
これらの検査を実施した後に、治療計画を作成し、保険診療として不妊治療を行っていく必要があります。内容を理解の上、実施していきましょう。
※ART治療を希望の場合、卵管精査は必要性が低いため、超音波下子宮卵管造影は施行しません。

採血検査  
妊娠前検査・甲状腺機能・風疹抗体価・抗精子抗体
凝固機能・血液型・HIV・微量元素
※下記は採血検査内容の詳細です。

1 妊娠前検査 (血算、生化学、血糖検査) 
貧血の有無、肝臓の酵素数値、腎機能、血糖など一般的な採血検査になります。妊娠前に異常を見つけておくことで周産期リスクを軽減することができます。

2 甲状腺機能 
甲状腺ホルモンの異常により、妊娠率低下や流産率増加などが起こります。

3 風疹抗体価 
風疹抗体価を測定することで、風疹に罹患するリスクを評価します。
妊娠初期に母体が風疹に罹患すると、胎児に先天性風疹症候群を起こすことがあります。
風疹抗体価が低い場合は、風疹ワクチン接種を推奨します。

風疹ワクチン接種をした場合は2か月間の避妊が必要となります。
一般不妊治療の場合は、避妊期間中は治療ができません。
ART治療の場合は、避妊期間中の胚移植はできませんが、採卵から胚凍結までを行うことが可能です。
 そのため時間のロスはないと考えていただいて差し支えありません。
※ 風疹ワクチンを接種しても、抗体が十分につかない場合や、時間とともに徐々に減少してしまい、妊娠初期に十分な抗体を保持していない場合があります。あくまでも母体風疹感染の危険性を減らす工程と捉えておいた方が好ましいかもしれません。


4 抗精子抗体検査
性交渉などが契機となり、精子に対する抗体が産生されることがあります。
抗精子抗体陽性の場合、子宮、卵管へと精子が泳いでいく過程で不動化してしまい、妊娠率を下げてしまう要因となります。

5 凝固機能検査
出血傾向の有無などを確認します。

6 血液型検査
特殊な血液型でないかを確認します。

7 HIV検査
HIV感染症既往の有無を確認します。
早期発見により重症化を予防、また夫婦間、胎児への感染リスク軽減につながります。
その他の感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、梅毒)は、ART導入時に保険診療として行います。

8 微量元素検査 (亜鉛、活性化ビタミンD)
亜鉛、ビタミンDが不足している場合、補充により妊娠率を向上する可能性が報告されています。
不足があればサプリメントで補充をしましょう。

超音波下子宮卵管造影 (約15,000円)

卵管閉塞による不妊症を否定する目的で行います。
日本ではレントゲン透視下に卵管造影を行う施設がほとんどですが、当院では超音波下に行っています。
欧米の多くではこの手法がとられています。
超音波下で行うことで、被曝がない事、造影剤の種類が異なるため疼痛も軽い事が利点として挙げられます。