メトグルコ(一般名:メトホルミン)
主に糖尿病治療薬として使用される内服薬ですが、
不妊治療にも利用されるお薬です。
不妊治療におけるメトホルミン(メトグルコ)の使用意義
当該薬は肝臓の糖産生を抑制し、インスリン抵抗性を改善する効果があります。
これにより、血糖降下作用があるため糖尿病で使用されます。
※インスリン:血糖低下作用をもつホルモン
多のう胞性卵巣症候群に代表されますが、
月経が不順な方はインスリン抵抗性が高い方がいることが分かっています。
月経が不順=排卵が不順のため、
不妊治療においてはインスリン抵抗性を改善することにより、
排卵障害を改善、つまり卵胞発育を促進することで妊娠率をあげる作用が確認されています。
(RCOGガイドライン:Metformin Therapy for the Management of in women with PCOS. )
つまり、血糖を下げることが目的ではなく、
インスリン抵抗性に異常がある場合は、
インスリン抵抗性を改善することで、排卵障害を改善する可能性があるため、
不妊治療にも使用されます。
メトホルミン使用を推奨される対象者とは
インスリン抵抗性(HOMA指数)は、空腹時血糖値と血中インスリン濃度により求められます。
月経不順の傾向がある女性の中で、
HOMA指数が高い場合や、HOMA指数は正常でも肥満傾向にある方を対象として
メトホルミン内服を推奨させていただきます。
メトホルミンの使用方法
使用方法が少し複雑ですので、よくご理解下さい。
① 内服開始時期
基本的に薬を渡されたら早めに開始をしましょう。
ただ日本国内においては、当該薬は妊娠中の内服使用が推奨されていません。
妊娠が判明した時点で内服終了としてください。
② 開始当初の内服方法 (開始~約1週間)
開始当初は副作用が出やすい時期のため、少なめの量から開始をします。
1週間は朝、夜に1錠ずつ(計2錠/日) を内服するようにしましょう。
③ 開始1週間後以降は維持量へ
副作用もなく、内服が可能な場合は下記の様に
朝昼晩と1錠ずつ(計3錠/日)に増やして、それを維持量としましょう。
※薬の残数はご自身での管理となります。
次回来院までに足りなくなりそうであれば、診察時に医師にご申告下さい。
追加の処方薬をお渡しします。
④ 中止のタイミング
前述のように妊娠を契機に中止をする必要があります。
人工授精の方: 人工授精当日 から 次の月経発来まで 中止
ART治療中の方: 胚移植当日 から 次の月経発来まで 中止
として下さい。
※ART治療の方は、胚移植するまでは妊娠機会がないので、
採卵周期中は中止する必要はありません。
副作用と対処方法
副作用としては、下記のようなものがあります。
・低血糖に関連する症状:震え、冷や汗、動機、不安感、空腹感、頭痛、嘔気など
・アレルギー:蕁麻疹など
・消化器症状:吐き気、胃痛、下痢など
・乳酸アシドーシス:筋肉痛、呼吸困難、無力感など (極々稀)
副作用が出て、既定の内服方法が難しい場合は減量は自己判断で行って構いません。
不妊治療のためには内服をした方が良いわけですが、
副作用が出てしまうようであれば減量、もしくは中止せざるを得ません。
減量して継続できそうであれば、2錠/日 もしくは 1錠/日 にする。
それさえも厳しければ中止をしましょう。
(次回診察時に、副作用で中止したことを医師にご報告下さい。)
妊娠中にメトホルミンを内服してしまった場合
海外においては、当該薬は妊娠中にも継続使用されることがあります。
これは、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの周産期合併症のリスクを下げる可能性が
複数報告されているからです。 (Gynecol Obstet Invest.2010;69:184-189)
※日本では薬剤添付文書上、妊娠中は使用が制限されているため、中止するようにお話をしています。
そのため、もし妊娠中に使用したとしても、基本的に安全性は高い、
むしろメリットの方が大きいかもしれませんので、慌てる必要はないでしょう。
気付いた時点で中止しましょう。