不妊治療を実施していく中で、実施すべき検査項目はいくつもありますが、その多くは保険適応と判断されておらず、
自費診療で検査をする必要があります。
不妊治療における自費診療検査とは、どのような内容・意義を持った検査なのか概説します。
自費採血検査 (不妊検査)
保険適応外でも行っておくべき検査としては下記が挙げられます。
保険診療と比べ、自己負担額が高くなってしまいます。
・採血検査 (全員対象)
1 妊娠前検査
2 甲状腺機能検査
3 感染症検査
4 風疹抗体価検査
5 抗精子抗体検査
6 凝固機能検査
7 血液型検査
8 微量元素検査
・卵管造影検査 (一般不妊治療を行う予定の方のみ対象)
採血検査
1 妊娠前検査 (血算、生化学、血糖検査)
貧血の有無、肝胆道系酵素、腎機能、血糖値など一般的な採血検査です。
異常がある場合は妊娠前に見つけておくことで周産期リスクを軽減することができます。
2 甲状腺機能
甲状腺ホルモンの異常により、妊娠率低下や流産率増加などが起こります。
3 感染症検査
B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、梅毒、HIVの4項目の感染症有無を確認します。
早期発見により重症化を予防、また夫婦間、胎児への感染リスク軽減につながります。
男性: 上記4項目全ての感染症検査が必要です。
女性: HIVのみ自費検査として行います。 残り3項目はART導入前に保険診療として行います。
4 風疹抗体価検査
風疹抗体価を測定することで、風疹に罹患するリスクを評価します。
妊娠初期に母体が風疹に罹患すると、胎児に先天性風疹症候群を起こすことがあります。
風疹ワクチンを接種後の方も、抗体価が増えない、もしくは時間経過で減ってしまう場合がありますので、
胎児を守るために必ず確認しましょう。
抗体価は低い場合は、風疹ワクチン接種を推奨いたします。 (詳細は別項へ)
※風疹ワクチン接種後は2か月間避妊が必要になります。
5 抗精子抗体検査
性交渉などが契機となり、精子に対する抗体が産生されることがあります。
抗精子抗体が陽性となる場合、精子が子宮、卵管と泳いていく過程で不動化されてしまい、
妊娠率が低下してしまいます。
抗体陽性の場合: 妊娠率は低下しますが、一般不妊治療でも結果が出る方は沢山います。
年齢、背景を加味して、ART治療を導入するか検討しましょう。
ARTであれば、妊娠率低下には寄与しません。
6 凝固機能検査
血を固める機能についての検査です。
採卵においては針を使用するため、出血傾向がないかを確認します。
7 血液型検査
一般的な血液型かを確認します。
血液型不適合妊娠等を事前に察知するために必要な検査です。
8 微量元素検査
妊娠率、妊娠継続率に関与すると報告されているビタミンD、亜鉛、葉酸の数値を確認します。
不足があればサプリメントで補充を行いましょう。
※抗ミュラー管ホルモン検査(AMH)
AMHは卵巣機能を推定する採血検査です。
早めに検査を希望される方もいらっしゃいますが、
保険ART治療を考慮されている女性は、保険適応検査として実施可能なため、
保険診療開始後に女性ホルモン採血検査とともにと行うようにしております。
卵管造影検査
卵管閉塞がないかなどを確認する検査です。
一般不妊治療(タイミング、人工授精)では卵管機能が重要になりますので、
基本検査として行うことが多いですが、
ART治療の場合、卵管状況は治療成績には関与しないと考えられていますので
行いません。
痛みが出る検査のため、どうしても行いたくない場合やなどには
スキップすることも可能ですので、担当医にご相談下さい。