分娩施設を選択するにあたって

分娩管理(周産期医療)とは非常に特殊な医療であり、母児二人の安全を確保する必要があります。
多くの分娩では分娩予定日前後で元気な赤ちゃんが産まれるため、通常の産科的対応のみで問題は起こりません。
しかし、長い妊娠経過において一定確率で母児いずれかにアクシデントが起こってしまうことがあります。
例えば、妊娠の負荷により母体に重篤な高血圧となることがありますが、そうなると妊娠継続が難しく、早産での分娩となることがあります。その場合は、高血圧の母体管理であったり、未熟な産児の管理が必要になるため、高度な周産期医療施設でないと対応ができません。分娩管理の難しい点として、これらのアクシデントの多くは発生予測がつかず、誰にでも起こりうるということでしょう。
一昔前は、周産期アクシデントへの対応策がしっかりと定まっておらず、受け入れ先が中々決まらず、
“妊婦のたらい回し” が発生することもありました。 現在は、主に都道府県単位で周産期医療システムが構築されており、アクシデントにも円滑に対応できるようになっています。

分娩施設選択において大事な事
1.ご自身のリスクを評価する 

2.何を優先するかを決めましょう!
医療的な安心、充足度が重要 、 ハイリスク妊婦 → 高次周産期施設がお勧め
綺麗さ、食事など、医療以外の面が重要 → 個人施設がお勧め
通院の利便性 → 近隣施設がお勧め

周産期システム

分娩施設はその対応可能レベルにより 
① 総合周産期母子医療センター 
② 地域周産期母子医療センター 
③ 周産期救急医療協力病院 
④ その他
      に分けられます。
基本的に①ほど高次医療施設で医療対応可能な範囲が広くなります。

① 総合周産期母子医療センターは、周産期におけるアクシデントのほぼ全てに対応できる施設です。
産科はもちろん、緊急手術の際には麻酔科、新生児の対応には新生児科、合併症がある場合はその科の医師と、有事の際の対応を迅速に取ってもらえるでしょう 。
また、②~④の施設で対応困難な状況が発生した場合には、受け入れを考慮してくれる施設でもあります。

茨城県内の周産期システムでの役割は、下記の様になっています。


① 総合周産期母子医療センター
・筑波大学附属病院
・土浦協同病院
・水戸済生会総合病院‐県立こども病院

② 地域周産期母子医療センター 
・JAとりで総合医療センター
・茨城西南医療センター
・水戸赤十字病院

③ 周産期救急医療協力病院 
・筑波学園病院
・東京医科大学茨城医療センター
・石渡産婦人科病院
・江幡産婦人科‐内科病院
・小山記念病院

さらに 県西、 県南、 県央・県北 の3つの地域に分け、ネットワークを組んで有事の対応を考慮してくれます。
そのためクリニックを中心とした ④その他の施設 でも安心して分娩に臨むことができます。
クリニックの中には、より良い分娩になるよう様々な工夫をして、満足度が非常に高く、人気となっている施設もあります。

ただ、搬送を要する事態が発生した場合の対応は高次施設のほうがより迅速であることは理解できるのではないかと思います。 周産期においてアクシデント発生リスクが高い妊婦さんを“ハイリスク妊婦”といいます。 持病をお持ちだったり、高齢であったりする場合は、高次医療施設での管理を勧められる場合があります。その場合は、ご自身と胎児の安全のため素直に限定されたなかで施設選択をしましょう。

※ 高次施設を推奨はされなかったが、高次施設にするべきか迷っている方へ
どこまでのリスク(年齢、持病) を受け入れるかは、その施設の方針により様々です。
管理を受け入れてもらえるかどうかは、まずは実際に受診してみて医師へ相談してみるとよいでしょう。


分娩施設選定においては、上述の医療対応可能範囲の広さ(医療的安心)の他に
快適さ、費用、利便性(距離)など が関わってくると思います。
分娩管理において夫婦で優先する事項が何なのかを考えて、決定していきましょう !