人工授精周期のスケジュールを概説し、
円滑に周期が進められるよう事前に把握いただきたい点、
注意点などを記載していきます。

人工授精を行う患者さまは、一読いただき、
ご理解いただけるようご協力よろしくお願いいたします。

人工授精周期のまとめ

・来院回数はおよそ 3回/月 くらい

・人工授精本番の日程は卵胞発育次第で決定しますが、
  目安として下記のような日程になることが多いです。
        月経28日周期の場合 →月経14日目前後
        周期周期が長めの方は 月経14日目よりは遅めの日程
        周期周期が短めの方は 月経14日目よりは早めの日程

卵胞チェック日には、人工授精の日程を決定できるように
 お二人の都合を把握してからご来院下さい。
  ※卵胞チェック日の翌日以降が人工授精候補日になるので、
  お二人の予定として、可能な日程がどこかを幅広く確認してきて下さい。

人工授精とは

人工授精(AIH:Artificial Insemination by Husband)とは
精液を培養液下に調整し運動良好精子を抽出、そして調整精液をカテーテルを用いて子宮奥方に注入する妊娠手段です。
通常の性交渉では、精液が膣内に射精され、そこから精子が遡上していくわけですが、
人工授精の場合は、濃度を高めた運動良好精子である点、移動距離が短くてすむ点で
自然妊娠よりも妊娠率を向上させることができます。

妊娠率は周期当たりで3~9%程度です。
1回、2回で多くの方が妊娠できるという方法ではありません。
何回か行って、この手法で妊娠できるかを確認していきましょう。

人工授精周期の概要

簡単に人工授精周期の来院目的、診療内容をまとめました。
大体1周期が約1か月として、その間に3回はご来院いただく予定となります。
順に内容を解説していきます。

①周期の方針相談
来院時期:月経初旬(生理2~4日目を目安)
その周期の方針を確認していきます。
・人工授精に関する同意書(毎周期必要)のお渡し
・妊娠率向上のための排卵誘発剤処方 
採血検査として、女性ホルモン検査、AMH(抗ミュラー管ホルモン検査:卵巣機能検査)
を必要時に一度行います。

②卵胞チェック
来院時期:生理12日目ころ目安 (個々人により日取りは変わります。)
卵胞発育が順調かを超音波検査にて確認していきます。

卵胞発育が順調で、大き目な卵胞が確認できれば(=排卵日の予測がつけば)
   → 人工授精の日程を決定します。
   → 最短で卵胞チェックの翌日以降が人工授精の候補日になります。
    事前にお二人の都合の確認を行っておいて下さい。
 例:1/12(月経12日目)に卵胞チェックの場合、1/13~1/16頃の二人の予定を把握してから
  ご来院いただくことが必要です。


卵胞発育が不良で、まだ大きな卵胞が認められない場合は、
   → 数日後に再度卵胞チェック2回目を行う。
   → 大きな卵胞が確認されれば、人工授精の日程を決定します。 
  月経周期が不順な方ほど卵胞発育が安定しない傾向となり
  数回の受診が必要となることがあります。

③人工授精当日
排卵予測日に人工授精を行っていきます。
周期毎の同意書提出が無い場合、人工授精実施ができませんので、処置日当日までに必ずご持参ください。(基本的にお受取の次の診療日にご提出下さい。)

人工授精当日は精液の提出が必要です。
基本はご自宅採精が推奨ですので、カップで病院にご持参いただきます。
そのため、男性は当日ご来院できなくても、実施することは可能です。
精液の受取可能時間帯や、実施までの時間的な流れなどの詳細は
別項にまとめてありますので、ご覧になってください。

※人工授精当日ないし前日に、排卵を起こすためのhCG注射を基本的に行います。
※人工授精実施後は、医師の指示に従い、市販妊娠検査薬(薬局等で購入)の使用して下さい。

人工授精周期を円滑に進めるための ポイント2つ

1.卵胞チェック時には、人工授精可能日を把握してご来院ください。
早ければ卵胞チェック翌日、以降数日間が人工授精候補日になりますので、
お二人の都合で可能な日程を必ず確認してからご来院下さい。

来院可能な日程の範囲で、身体の状況を鑑みて、薬剤で微調整を行い
人工授精の日取りを決定していきます。

2.卵胞チェックの前は、可能であれば性交渉を持ちましょう。
卵胞チェックは排卵少し前を目標として日程を提案します。
しかし、周期によっては早めに排卵をしてしまうこともありますので
卵胞チェック日には既に排卵してしまっていたという事もあります。
①せめてタイミングは取れていた方が良い
②定期的に射精をしておいた方が良い
という2点から、卵胞チェック前の時期は、
可能であれば性交渉をもっていただくとより良いと考えられます。

人工授精周期によくある質問

卵胞チェック前日に性交渉もってしまっていても、禁欲期間的に大丈夫なのでしょうか?

人工授精の日程は早くても卵胞チェックの翌日以降になります。
従って、少なくとも2日は空くことに事になりますので、
卵胞チェック前日以前については、性交渉をもっていただいても問題はありません。

当日、射精から提出までに2時間以上かかってしまうのですが
大丈夫でしょうか。

提出までの時間が長すぎることで、調整後精液中の精子濃度、運動率が低下する場合があります。ただし、推奨を射精後2時間以内の提出としているのはあくまでも目安であり、2時間を過ぎると急速に劣化するわけではありません。
元の精液所見が良好な方であれば、十分な運動精子数を確保し、結果好条件での人工授精が可能な方もいますし、逆に元々の精液所見が不良な方は、より不良な調整結果となる可能性があります。
人工授精至適日である排卵日をずらすことも難しいので、女性の排卵状況を優先して日程は決めていくべきと考えます。
男性都合で人工授精をキャンセルすることは、女性の加齢を進めてしまうことになりますので、その場合は実施トライを推奨させていただくことが多いです。

人工授精日 以降に性交渉はもってもよいのでしょうか?

基本的に、排卵推定日に人工授精を行っていただいています。
その周期の妊娠率向上の観点では、それ以降の日程で性交渉をもっても、
そこまで妊娠率向上の効果は期待できないと予想はされます。
しかし、性交渉を持つこと自体は問題はありませんので、特に制限はありません。
(人工授精後で出血がある場合は、少しの期間控えて下さい。)
性交渉により、精神的な安定や、一時的に卵管機能が向上し、精子運搬が助けられるという報告もありますので、控える必要はないでしょう。

人工授精周期を開始してから、
生理が元々と少し変わってしまったんですが
お薬のせいでしょうか?

当院では人工授精周期に使用する薬剤として、
妊娠率向上を目的として基本的に下記を使用します。
①排卵前に使用する誘発剤
  排卵が元々遅い方は、早めに排卵する傾向になります。
②排卵後に妊娠率を向上させる女性ホルモン剤
  排卵後のホルモンが普段より上昇する。
  使用期間中は月経が来ずらくなる。
  終了後に速やかにホルモンが低下する。

これらの作用により、普段の月経と比べ
・周期日数が変わってくる (人により短くなったり、長くなったり)
・月経の性状が変わってくる (出方や量、持続期間など)

このように完全な自然月経周期とは多少異なってきますので、
生理が普段と違ってきても心配はしないで下さい。

排卵前に透明な帯りものが出てくるのを自覚するタイプです。
卵胞チェックの日程前に、透明な帯りものがあり、排卵が近い気がします。
どうすればいいですか?

排卵チェックの日程は、月経周期から予想される排卵日の少し前で設定しています。
周期によっては、予想される排卵日よりももっと前に排卵することも散見されます。
排卵が近づいていると思われる兆候が明らかであれば、卵胞チェックを前倒しにするべきかもしれません。
(※卵胞チェック日にすでに排卵した後であれば、その周期は人工授精はできません。)
ただし、透明な帯りものの自覚があっても、卵胞発育がまだまだ十分でない結果になれば、数日あけて再度来院が必要となる可能性があります。