ウイルスや細菌などにより、妊娠中に感染症を起こした場合、
その原因菌(ウイルス)、感染程度によっては胎児へ影響を及ぼす可能性があります。
どのような感染症に注意が必要で、普段の生活をどのようにするとよいのかなど
分かっていている範囲で掲載していきます。

感染症を100%防ぐことはできませんし、
多くの感染症は胎児へ影響しないため、
過剰に心配し過ぎて、ストレスを抱えないようにしましょう。

感染症予防のためにできることまとめ

感染症の種類は星の数ほどありますので、
今回の記事で解説する感染症は、周産期で問題となりやすい
①トキソプラズマ  ②リステリア  ③サイトメガロウイルス  
に絞ります。
この3つの感染症についての各論は次段落にまとめていきます。
※上記以外で注意が必要な感染症としては、性感染症(STI)の一部があげられます。
STIまで広げますと種類が膨大になってしまうこと、
不特定多数との性行為を避けるということで防ぐことができることから、
妊娠中ということで今回はSTIにはふれずに進めていきます。
 
まず、これら感染症を予防するために共通して重要な対応策は下記となります。
細かい各論は見るのが大変な場合は、この対応策だけしっかり守るだけでもいいかと思います。

感染予防対策として一般的に推奨される事項  
                   (産婦人科診療ガイドライン産科編参照

  1. 手をよく洗う 
    食事前、生肉を扱った際、ガーデニングの際、動物の排泄物処理の際は感染予防のため、適宜手洗いをしましょう。
  2. 体液に注意をする 
    体液には感染原因となる微生物が含まれることがあります。
    お子さんのおむつ交換は手袋をする、食べ物の口移しはしない、歯ブラシの共有はしない、
    性生活ではコンドームをする、オーラルセックスは避けるなど注意をしましょう。 
  3. 食べ物は加熱しよう
    生肉、生ハム、サラミ、加熱していないチーズなどは感染の原因となる微生物が含まれることがあります。
    また、加熱しないで食べる生野菜はしっかり洗いましょう。
  4. 人ごみを避けましょう。
    感染症をもらわないよう人ごみを避ける、外出時はマスクを着用しましょう。
    子供を介して感染することもあるので、発熱、発疹のある子供には注意しましょう。

注意すべき感染症1 トキソプラズマ (猫が関係)

トキソプラズマはネコ科動物を終宿主とし、ヒトなどを中間宿主とする人畜共通寄生虫です。

妊娠中の初感染は、胎児に先天性トキソプラズマ症をきたす可能性があります。
妊婦のトキソプラズマ抗体保持率は約7%と低くなってきているものの、
先天性トキソプラズマ症は10,000出生に1人と、胎児に影響を及ぼす可能性は非常に低いです。

猫の糞などにトキソプラズマの卵が含まれる可能性があるため、
猫の排泄物処理の際は手袋をする、処理後手洗いをする、など気をつけましょう。
また、生肉や、土にふれる食材(生野菜など) をそのまま食すことでも感染する可能性があります。

予防対策 (トキソプラズマ)

・ガーデニングの際には手袋をし、終わったら手洗いをする
・肉は加熱する、土にふれる野菜、果実は洗ってからたべましょう。
・野良猫、子猫が危険とされており近づかない
・新しい猫を飼い始めない
・猫に生肉を餌としてあげない
・猫用トイレは手袋、メガネを着用してこまめに清掃する。もしくは妊婦さん以外が行う。

注意すべき感染症2 リステリア (食べ物が関係)

河川水や動物の腸内など広く分布する細菌です。
推定感染者数は年間200人程度の稀な感染症ですが、妊婦さんは胎盤、胎児への感染により、
流産や胎児への影響がでる可能性が報告されています。
加熱により死滅しますが、低温下や、高塩分濃度下でも増殖できる細菌です。

注意が必要な食材としては、生ハムなどの食肉加工品、未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの未加熱乳製品、スモークサーモンなどの魚介類加工品などです。

予防対策 (リステリア)

・生野菜、果物は食べる前によく洗う
・賞味期限内にたべるようにする
・開封後は早めに食べる
・危険性のある食材は冷凍庫で保存する
・過熱してから食べる
                (この項は厚生労働省ホームページを参照にしています。)

注意すべき感染症3 サイトメガロウイルス (小児が関係)

感染機会の多いウイルスであるが、近年抗体保有率が低下しているといわれており、
成人女性の70%弱で抗体を保持しているとされています。
(=30%強の女性はかかりやすい状況)

妊娠中に初めて感染した場合に、胎児感染のリスクが高く、
胎児に先天性サイトメガロウイルス感染症、流産、死産を引き起こす可能性があります。
抗体陰性妊婦は、妊娠中初感染の危険性があり注意が必要だが、
抗体価検査は一般的に行われないことが多いので、妊婦全員が感染予防することが推奨される。

ただし、抗体陰性妊婦においてもサイトメガロウイルス感染症をおこすのは1~2%と低く、
さらに胎児感染を起こすのはそのうち40%といわれており、頻度は低いといえるでしょう。

唾液、尿、血液、精液、膣分泌物などに含まれ、感染契機は多いウイルスであり、
小さなお子さん(特に年長児前後)がいる場合は、特に注意をしましょう。

予防対策 (サイトメガロウイルス)

・頻回の手洗い
 おむつ交換、子供への給仕、子供のハナやヨダレをふく、子供のおもちゃを触る際に
・子供と食べ物、飲み物、食器を共有しない
・歯ブラシを共有しない
・子供とキスするときは唾液接触を避ける
・おもちゃ、寝具など(唾液、尿と触れそうな場所)は清潔に保つ