人体中には約20種類のミネラルが存在しており、多い順にカルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄と続き、鉄よりも含有量の少ないミネラルを“微量元素”と呼びます。
ミネラル・微量元素は健康を保つために欠かせない役割があり、過不足により様々な症状が表出します。

不妊症に関与する微量元素として “亜鉛” が注目されています。
亜鉛は鉄に次いで人体内含有量が多い微量元素です。
亜鉛はステロイドホルモン(女性ホルモン含む)のホルモン受容体を構成するため、その作用発現に不可欠とされており、亜鉛不足と不妊症の関係が報告されています。

男性においても、亜鉛不足は精子所見不良の原因となります。
不足しているかは、採血検査にて確認することができます。

亜鉛は食品の中では牡蠣、エビ、タコなどの海産物、牛肉、豚肉、レバー、卵、ごま、納豆、木綿豆腐などに多く含まれるとされます。 経口摂取した亜鉛の約20~30%が吸収され、骨、肝臓、腎臓、筋肉を中心に体内に約2000mg存在します。

コンビニフードやインスタントフード、ジャンクフードなどには亜鉛の含有量が少なく、一般的な現代人の食生活では亜鉛が不足しがちになります。
亜鉛は意識しないと十分量を摂取するのが難しいとされ、不足している場合は亜鉛サプリメントを使用することをお勧めします

亜鉛の吸収に関わってくる微量元素に銅があげられます。
銅は骨、骨格筋、肝臓を中心に体内に約100mg存在しています。
酵素生成、造血、骨形成、活性酸素除去の役割をもち、牡蠣、魚介類、レバー、ナッツ、大豆、ココアなどに多く含まれます。日本人は、銅摂取量が多い傾向があります。

亜鉛と銅は小腸から吸収されますが、両者は拮抗する性質をもち、
腸内での濃度が高い方がより多く吸収されます。
腸内の亜鉛濃度を上昇させることで、亜鉛は効果的に吸収され血中亜鉛濃度は上昇し、
血中銅濃度は低下します。
逆に、銅を過剰に摂取すると血中亜鉛濃度は低下します。

また、豆類、茶、コーヒー、赤ワイン等に含まれるフィチン酸や、食品添加物(EDTA,ポリリン酸、カルボキシメチルセルロースなど) は亜鉛をキレート(体外へ排出)するため、亜鉛濃度を下げることになります。取りすぎは控えましょう。

その他にも、ストレスにより微量元素の吸収率が低下し、体外への排出率が上昇する報告や、
アルコール摂取により微量元素の排出率が上昇するといわれているので、
ストレス軽減や過度な飲酒は控えることも重要といえます。
微量元素は様々な食品に少しずつ含まれているので、バランスよい食生活が重要であると考えられます。

豆類、茶、コーヒー、赤ワイン(アルコール全般)は過量に摂取しない
食品添加物はなるべく減らすが良いと考えます。

厚労省の報告によると、
亜鉛は摂取基準 男性11mg/日、女性8mg/日 (妊婦は10mg/日推奨) に対し、
   摂取量 男性8.8±2.8mg/日、女性7.3±2.2㎎/日となっています。


銅は 摂取基準0.9㎎/日に対して、平均摂取量0.97㎎/日とやや多めの傾向にあります。

日本人は銅摂取過多、亜鉛摂取不足の現状になっています。

論文報告としては下記があげられます。

・妊娠群と非妊娠群で、亜鉛、銅の血液濃度を精査したところ、
非妊娠群で銅濃度が優位に高かった。
ROCからカットオフラインは、銅濃度160未満、銅/亜鉛<1.6が好ましいと推測される。     
                      (BMC Research Notes 2017; 10: 387)

・子宮内避妊器具に銅を添加することで避妊効果が向上する。
銅非添加の子宮内避妊器具による避妊効果は99%以上とされていますが、銅を添加することで
避妊効果が向上し、銅添加避妊器具挿入では千人以上の被験者全てで妊娠が成立しなかった。                   
                      (Hum Reprod 2013; 28: 2672) 

このように
亜鉛不足が直接妊娠率低下に寄与するかははっきりしていませんが、
亜鉛不足 ≒ 銅過剰になることが、妊娠率低下につながることが報告されています。

銅を減らすために亜鉛サプリメント摂取が重要となります。

亜鉛は過剰摂取により、銅不足、貧血、胃腸症状、 男性では前立腺肥大などを起こします。
耐容上限量 0.66 mg/kg/日(→50kgの方で33mg/日)とされており、
100㎎/日以上の連日摂取は前立腺がんリスク上昇が報告されています。

妊活にお勧めな亜鉛サプリメント

複数の論文報告でお示ししたように、亜鉛不足は、妊娠成立、妊娠継続に対して不利に働くため、
不足時は積極的にサプリメントを摂取しましょう。
どのメーカにするのか選択が難しいと思いますので、販売中の商品情報をまとめました。

※ビタミンB2配合: 亜鉛吸収率を向上させると報告あり
※亜鉛酵母: 効率よく体内で活用されるとされる
どちらも向上率は不明ですし、医学的根拠は薄いと思われます。

お勧めのメーカー、商品

コスパ、安心できるメーカー、買いやすさ など何を重視するかによると思いますが、
いくつかお勧めする商品を列挙します。

  1. FANCL 亜鉛
  2. DHC 亜鉛
  3. 大塚製薬 ネイチャーメイド 亜鉛
  4. VALX ビタミンD+亜鉛

FANCL 亜鉛   バランス良
ファインケミカル=混じり気の無い化学製品 という社名由来からもわかるように、無添加にこだわった化粧品、健康食品の大手メーカーです。 やや割高ですが、効果を高めるための工夫を行っています。 

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楽天 FANCL亜鉛 


 DHC 亜鉛  コスパ良
コンビニでよく目にするDHCですが、美容・健康業界では大手といえるメーカーです。
コスパが良く、無難にお勧めできる商品です。

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 大塚製薬 ネイチャーメイド 亜鉛   コスパ良
米国で開発、誕生したものを、大塚製薬が日本国内に導入したブランド。 
香料、着色料、保存料の無添加をうたっておりますし、製薬会社ということで安全性は高いと思われます。
費用的にはかなり抑えられていますが、含有量はやや少なめなので、軽度不足の方にお勧めです。

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 VALX  ビタミンD+亜鉛   高容量、便利
ボディービル、パワーリフティング界のレジェンド山本義徳さん監修のメーカーでプロテイン、サプリメントを中心に販売している。メーカーとしての安心感は大手より落ちるが、GMP認定もあり、選択肢の一つとして問題なさそう。
高容量かつ、ビタミンDと亜鉛の配合剤なので、両方不足している方にはとてもよい商品と思います。

アマゾン VALX


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Q:葉酸総合サプリのエレビットにも亜鉛が含まれているけど、他に亜鉛サプリも使うべき?
A: エレビット一日分に含まれる亜鉛は7.5mgと、少量にとどまります。エレビット使用中の検査で不足が指摘されれば、足して亜鉛サプリを使うべきでしょう。

Q:亜鉛サプリはいつまで続けるの?
A: 不妊治療中に使用した方が良いのは上述の通りです。

妊娠成立後については、
妊娠中の方が、非妊娠時よりも亜鉛摂取必要量は増えるため、継続することが理論てきにはお勧めだと思われます。
特に、亜鉛不足が高度だった方は、中止することで銅濃度が高まりすぎると、妊娠継続にマイナスに働く可能性はあるかと推測されます。
ただ、分娩まで亜鉛サプリを継続摂取したほうがよいという医学的な根拠もまだでてきていません。商品により添加物などが入っていて、それによる胎児への影響がないとは断言はできません。
お勧めとしては、妊娠後にきりが良い時にやめてしまうで良いかと思います。