まずは、妊娠中の薬使用について基礎的な情報を見てからにしてください。

妊娠中にも頭痛や腹痛、その他の痛みなどで痛み止めを使いたいときは沢山あると思います。
胎児への安全性が100%確定している鎮痛薬は残念ながらありません。
だからといって鎮痛薬使用が胎児にとって、常時ものすごく危険であるというわけでもありません。
危険性がないとは言い切れないことをよく理解し、胎児への影響を最小限にする努力をしつつ、
必要な時には使用を検討しましょう。

鎮痛薬使用がやや危険な妊娠週数

妊娠中に鎮痛薬を使用するに際して、注意が必要な時期は下記になります。
①胎児への催奇形性が問題となる妊娠4週~12週の絶対過敏期、相対過敏期 
②妊娠後期以降  

①妊娠4週以降は胎児にとって一番影響が懸念される絶対過敏期があり、週数が過ぎることにより徐々に危険性は下がっていきます。一般的に使用される鎮痛薬は、催奇形性が強く疑われるという根拠も恐らくありませんが、妊娠初期はより注意が必要でしょう。
12週以降も胎児毒性の観点では絶対大丈夫というわけでもないので、無闇に使用するのは避けましょう。

②日本においてよく使われる鎮痛薬であるNSAIDS(ロキソニン、ボルタレンなど)は、妊娠後期(妊娠28週以降)に使うことで、胎児循環において重要な動脈管を早期閉鎖してしまう懸念があるため使用を控えましょう。

妊娠中に使用しやすい鎮痛薬の種類

鎮痛薬にも多くの種類がありますので、全てを語ることはできませんが
一般的に良く使用される鎮痛薬として下記が挙げられます。
①アセトアミノフェン (カロナールなど)
②NSAIDS (代表例:ロキソニン ボルタレン)

①アセトアミノフェン (カロナールなど)
妊娠中でも比較的安全性が高いとされている。
欧米では50~70%の妊婦が使用していると報告されており、鎮痛薬の中では1stチョイスとなる薬剤です。
ただ、近年の報告では注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム(ASD)の発症率を上げる可能性を示唆する報告も出てきています。(Pediatrics. 2017 Nov;140(5): Prenatal Exposure to Acetaminophen and Risk of ADHD . Eivind Y, et al.)
これらの報告はあくまでも可能性が示唆された段階であり、まだはっきりとアセトアミノフェンの妊娠中使用とADHD,ASD発症率上昇を結論づけてはいません。
また、アセトアミノフェン多量に使用することでそのリスクも上がるのではないかと考察をしていること、少なくとも7日間以内の使用であれば、ADHD,ASD発症率上昇には関与しなかったとしているので、念のためなるべく最小限の使用にとどめることが重要かもしれません。

②NSAIDS (代表例:ロキソニン ボルタレン)
アセトアミノフェンよりも鎮痛効果がやや高いと評価されており、日本国内では良く使われる鎮痛薬です。ただ、妊娠中の使用においては動脈管早期閉鎖を誘発するリスクがあるため、妊娠後期(妊娠28週以降)以降は控えましょう。
それ以前の妊娠初期においては、比較的安全とは考えられています。
鎮痛薬の2ndチョイスとして使用を考慮しましょう。