現代医学において、精液を必ずよくするという万能薬は残念ながら存在しません。
しかし、精液を改善する可能性がある行程は存在するため、
それらをしっかりと行っていくことが重要と考えられます。
まずは、基礎的な知識を簡単に概説し、
その後、改善のためにできるアプローチについて述べていきます。

男性不妊の基礎知識
不妊症カップルの半分で男性不妊が関与しているといわれており、
男性も不妊治療に積極的にかかわるべきといわれています。
精液検査・精子が不良な状況を、造精機能障害とよび、男性不妊原因の82%とほとんどを占めます。
それでは、その造精機能障害を起こす原因はどんなものでしょうか。
平成27年厚生省の調査において、造精機能障害の原因は
1位 特発性(原因不明) 約51%
2位 精索静脈瘤 約36%
3位 その他 (ホルモン異常、悪性腫瘍) 約13%
1位 “特発性” とは、いわいる原因不明という意味で、これが半分以上を占めます。
原因が不明であれば、改善する手段も不明となることは理解しやすいかと思います。
特発性は医療現場ではよく使われる単語で、このように原因がよくわかっていない病名に利用されます。
この特発性の中には、悪い生活習慣(喫煙、AGA薬使用など)が関与している場合もあれば、
遺伝子的な要素が絡んでいる場合もあると推測されます。
2位 “精索静脈瘤” は、造精機能障害の原因として特定できる病気としては、最も高頻度な疾患となります。
精巣周囲の血管が太くなり、精巣を暖めてしまうために精液不良となります。
3位 “その他” には、ホルモンバランス異常や悪性腫瘍などが含まれます。
悪性腫瘍はいわいる癌などのことですが、精巣や、その他の臓器に悪性腫瘍が存在すると精液所見は悪化することが知られています。
後述する “泌尿器科的なアプローチ” では、
こういった病気を持っていないかを検索していくことになります。
精子改善へのアプローチ方法
上述の様に、こうすれば絶対に精子がよくなるという方法はありません。
しかし、良くなる可能性がある手段としては下記の3つがあげられます。
これらは、それぞれ男性不妊で悩む方が行っておいた方がよい行程と考えます。
それぞれについての解説を後述します。
① 泌尿器科的アプローチ ~男性不妊診察~
精液検査が不良な方の中には、それを誘引する病気をお持ちの場合があります。
原因がみつかればそれを治療することで精子改善が望めることがあります。
医療介入で改善が見込めるパターンは、主に下記①~③の病気が認められた場合です。
① 精索静脈瘤
精巣周囲の血管が拡張し、精巣が暖められてめられてしまうことで精子所見が不良となると推測されています。
造精機能障害の病因としては最も高頻度であり、
大きな病変があるほど(重症であるほど)、除去後に改善率が高くなります。
除去するためには、手術療法が唯一の治療法となります。
静脈瘤の重症度、精液状況、不妊治療経過から治療をするかを検討することになります。
② ホルモンバランス異常
高PRL血症や、低ゴナドトロピン(LH、FSH)血症などが主に精子所見を不良にする要因になりえます。
その場合、薬物療法にてホルモン環境の是正を行います。
③ 悪性腫瘍 (精巣腫瘍)
癌を患っている状態であると精子所見は不良となります。
精子形成に悪影響を及ぼす悪性腫瘍としては、特に精巣腫瘍が代表的です。
そのため男性不妊精査としては、精巣腫瘍を否定することを行います。
睾丸痛などの自覚症状がない場合、この病気が見つかる可能性は非常に低いですが、
念のため否定しておくことが重要です。
(その他の臓器の悪性腫瘍でも、多くの場合で精液所見は悪化すると報告されています。たまたま、悪性腫瘍が見つかることは非常に稀ですし、精子が悪いからといって全身の癌を否定すべく全身検索を行うことは現実的ではありませんが、定期健康診断を受けることや、気になる症状がある場合は担当科で問題ないことを確認することはしておいても良いかもしれません。)
上記①-③の存在を見つけ、改善させることが男性不妊の観点で医療的にできることとなります。
このような疾患がないかを確認するために、
採血、触診、超音波検査などで精査をしていくことになります。
これら精査については、男性不妊症を扱うことができる泌尿器科医に診てもらうことが重要です。
茨城県内で男性不妊症を専門的に診てくれる施設を紹介します。
・筑波学園病院 (つくば市)
男性不妊専門の医師が常勤し、精査から治療まで幅広く対応していただけます。
紹介状が必要となりますので、医師へ相談下さい。

・ もりやファミリークリニック (守谷市)
男性不妊も対応可能な泌尿器科医師が常勤して精査から初期治療まで対応していただけます。
診療時間も幅広く受診しやすい体制も整っています。
当院通院中であることをお伝えいただき、精液検査結果などのデータをご持参下さい。

・ 中央泌尿器科クリニック (水戸市)
当院通院中であることをお伝えいただき、精液検査結果などのデータをご持参下さい。
※男性不妊診療が、長期間かつ頻回になることは非常に稀です。
まずは精査を行い、治療が必要な病気があるかを確認することが肝要です。
・精子所見悪化につながる病気が認められたか否か (例:精索静脈瘤など)
・何かしらの治療手段が提案されたか否か (例:手術、薬物療法など)
上記2点のみ、ご報告をよろしくお願い致します。
② 生活習慣改善
喫煙、体型、食事、運動など様々な要素が精子形成に関わっている可能性があります。
別項にまとめていきます。

③ 男性不妊向けサプリメント
ネット上では、多くの男性不妊向けサプリメントが販売されていますが、
医学的な効果検証が十分にはなされていない商品が多い印象です。
しかし、近年ある種のサプリメントにより精液改善や妊娠率向上に関与する報告が散見されております。
男性不妊むけにどのような成分がよいとされているのか、
サプリメントについての報告を幅広く紹介していきます。
まずは、亜鉛 関連の報告から、
・高容量葉酸と亜鉛サプリで精液所見、精子DNAメチル化が改善された。
(①Hum Mol Genet 2015; 24: 6301)
上記報告を受けて、米国で2370人の男性に対してRCT(最も信用性が高い研究)が行われました。
高容量葉酸と亜鉛サプリで精液所見、精子DNAメチル化は改善が認められなかった。
また、臨床妊娠率についても有意な向上は見られなかった。
これらは複数の論文で報告された。
(②JAMA 2020; 323: 35 ③Fertil Steril 2022; 117: 75 ④AAFP 2020)
亜鉛が精子に良いと聞いた事がある人は多いのではないかと思います。
確かに、①のように亜鉛で精子改善に効果があるという報告は存在するのですが、
質の高い研究モデル(②~④) でしっかりと試してみたら有意な精子改善はみられない、
妊娠率も変わらないという結果が多数報告されています。
男性向けサプリとして亜鉛は有名であり、精子改善に寄与する可能性はありますが、
効果がないとする報告も多数あり、その効果は限定的と推測されます。
また、一番重要な妊娠率を上げるという根拠も実はでていません。
そのため、まず亜鉛だけ取っておこうという考えは推奨されません。
次に様々な成分についての報告です。
⑤Fertil Steril 2013; 100: 1572 より
健康な男性189名(平均19.7歳)の精液所見と食生活について調査した。
カロテノイド(アルファーカロテン、ベータカロテン、ベータクリプトキサンチン、ルテイン、リコペン)、
ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE の摂取量を計算し、精液所見との関係を調べた。
・ベータカロテンとルテインの摂取量増加に比例して精子の直進運動率が増加した。
ベータカロテンは摂取量が低い群と比較し、摂取量が多い群は直進運動率が6.5%高かった。
・リコペン(リコピン)摂取量の増加に伴い正常形態精子が有意に増加した。
・ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEとその他のカロテノイドの摂取量は、精液所見に有意な影響を与えなかった。
この報告では、ベータカロテンとルテインは精子の運動性向上に、
リコペン(リコピン)は精子正常形態率を向上させる、可能性がそれぞれ示唆された。
⑤の報告に似た報告として、
精子に対して、抗酸化作用をもつ物質を摂取することが良いとする論文が複数報告されています。
・クリプトキサンチン、ビタミンC、リコぺン、β-カロテンの摂取が精子に良い。
・精子に必要な抗酸化物質および微量栄養素は、ビタミンC、ビタミンE、葉酸、亜鉛であると推測される。
・ビタミンc摂取により、精子濃度が向上する可能性がある。
これら複数の報告から、抗酸化作用を持つ物質は、精子所見改善に効果がある可能性が高いと推測されています。
最後にマカ(Lepidium meyenii)についての報告です。
マカも男性不妊症に対するサプリメントとして、注目されています。

男性不妊症に対してマカを使用した研究報告は多数あり、その中で信頼性が高い研究結果をまとめますと、
精子パラメーターが良くなった という結果と、あまり変わらなかった という結果が混在しています。
(Myeong Soo Lee,Maturitas.2016 / Hye Won Lee,Front Phamacol.2022)
精子にとって、確実に良い効果があるかは断定できませんが、良い効果をもたらす可能性がある食物という見解になります。
これらの報告をまとめますと、抗酸化作用をもつサプリメントや、
精子改善の可能性がある成分を万遍なく含んでいるサプリメントをとることが良いと考えます。
抗酸化作用サプリメント ~PQQについて~
上述のように抗酸化作用をもつ成分は精子改善につながる可能性が高いと考えられており、
強い抗酸化作用をもつ成分として、近年PQQが注目されています。
下記に一般的な説明、研究報告を掲載します。

PQQはビタミン用の補酵素で、1979年に発見された酸化還元酵素の補酵素として働く栄養素です。
ヒト体内では主に母乳に多く含まれます。
• 納豆、豆腐、キウイ、ピーマン、パセリ、緑茶などの食品に含まれるが、食事から摂取できる量は限られるため、摂取するためにはサプリメントが一般的である。
・期待される効能について <論文報告から>
PQQ摂取により、ミトコンドリア機能改善によるエネルギー代謝改善、
抗酸化作用、その他にも認知機能向上など様々な健康効果が報告されています。
下記に医学論文の一部を列挙します。
抗酸化作用 1.Karen R,Biomolecules 2021. 2.Melissa Mitri, Nutrition 2024.
ミトコンドリア機能改善 1.Nalbant MA, Cell Mol Biol 2023. 2.Jonscher KR, Biomolecules 2021.
認知機能向上 1.Melissa Mitri, Nutrition 2024.
心血管系イベントリスク改善 1.Michael T, Neurology 2016 .
このように様々な効果が報告されているPQQですが、
不妊症改善に関わる効能としては、主に抗酸化作用、ミトコンドリア機能改善が関わると予想されます。
PQQによる妊娠率向上の研究データ
PQQはまだ新しい栄養素であり、ヒトに対しての報告はまだほとんどありません。
ただ、動物での研究としては妊娠率をあげる報告がされています。
下記にご紹介するデータは、
広島大学・大学院統合生命科学研究科・生殖生物学研究室のデータをお借りして供覧しています。
当該研究室は、生殖医療分野において非常に先進的な研究をしていることで有名です。
報告① ブタ精子を通常培養液、CoQ10添加培養液、PQQ添加培養液で数時間培養し、
精子の直線運動速度、精子内ROS(活性酸素)活性について解析した。

・抗酸化剤として既知であるCoQ10添加と同様に、
直線運動速度はPQQを添加することで速く保たれた。(左図)
・精子は通常培養液で放置することでROSが上昇したが、
PQQを添加した群で最もROS上昇が軽減された。(右図)
報告② ブタ精子を通常培養液、CoQ10添加培養液、PQQ添加培養液で数時間培養し、
精子のミトコンドリア活性、ミトコンドリアDNAを解析した。

・精子は通常培養液で放置することでミトコンドリア活性が低下した。
PQQを添加した群で最もミトコンドリア活性の低下が軽減された。 (左図)
・精子は通常培養液で放置することでミトコンドリアDNAの正常性は顕著に低下した。
PQQを添加した群で最もミトコンドリアDNA正常性が維持された。 (右図)
精子とミトコンドリアの関係については次項で補足説明していますので、ご参照下さい。
報告③ 若齢マウスにPQQを投与し、精子の直進運動性を解析した。

若齢マウスにPQQを投与することで精子の直進運動性は向上した。
報告④ ライディッヒ細胞を機能不全にした若齢マウス(KO群)に、PQQを投与して様々な解析を行った。

※ライディッヒ細胞:精巣内に存在し、主に男性ホルモン産生を行う。
この細胞が機能しないと、男性ホルモン不足や生殖能力が低下する。
・KO群では男性ホルモン値が下がったが、PQQ投与により男性ホルモン値は正常値まで改善した。(上左図)
・KO群では精子奇形率が高度に上昇したが、PQQ投与により精子奇形率は改善した。(上中図)
・KO群では交尾率が顕著に低下したが、PQQ投与により交尾率が上昇した。(上右図)
・KO群では交尾後の体内受精率は顕著に低下したが、PQQ投与により体内受精率が上昇した。(下左図)
・KO群では体外受精における受精率は顕著に低下したが、PQQ投与により体外受精における受精率が上昇した。(下右図)
精子と「ミトコンドリア」について
精子は頭部(DNAを保持)、中片部(エネルギーを産生)、尾部(運動を担う)の3つに分かれます。
卵子にたどり着くには、速く直線的に泳ぐ力が必要です。
そのエネルギー(ATP)を作るのが、中片部に密集したミトコンドリアです。
ただし、エネルギーを作るときに出る活性酸素(ROS)は、精子の運動性を下げてしまいます。
抗酸化物質がミトコンドリアを守ることで、精子は元気に動き続けられるのです。
このように、精子形成を改善するために抗酸化作用サプリメントは摂取する
価値が高いのではないかと考えられています。
推奨される男性不妊向けサプリメント
男性不妊や、精子が不良な方に向けてのサプリメント商品は多数ありますが、
そのなかで推奨度が高いものを理由とともに掲載していきます。
不妊治療中の男性に一番使っていただきたいサプリメントは、
1 PQQを主成分とした製品であるロート製薬の セルアライブEX
上述の様に、PQQは強い抗酸化作用をもつ物質です。
精子運動性向上、受精率向上、体外受精成績向上を期待することができます。
研究報告からこちらのサプリメントが最も推奨できると考えております。
一般購入はできない製品ですので、ご希望の方は下記購入方法をご覧になり使用をご検討下さい。

2 バイエル社のメネビットになります。
男性不妊の方にとって、良いかもしれないという成分が様々入ったサプリメントです。
別項で、メネビットの臨床データなども含めてご紹介します。

よくある質問
- PQQ(セルアライブ)とメネビットは併用してもよいのでしょうか。
両剤とも抗酸化作用をもつ成分が多く含まれています。
補完的に良い作用をもたらす可能性もありますが、
抗酸化作用が強すぎになってしまう可能性もあります。
個人的には、まずはPQQの使用を検討いただけるといいと考えています。
- 男性不妊サプリメントはどの程度の期間使用するとよいのでしょうか?
精子は作られるまでに3か月弱の期間を要します。
少なくとも半年程度を目安として、長期間の使用を検討するとよいでしょう。
効果判定として精液検査を目安にされる場合も多いですが、
目的は妊娠成立であって、精液検査の改善ではありません。
推奨サプリの使用により、精子DNAの改善報告もありますので
サプリ使用による効果判定に適切な項目がないのが現状です。
治療経過全体(精液、胚培養経過、妊娠結果等)を通して、使用を継続するかを
判断していくことが好ましいと考えます。
PQQ(セルアライブEX)購入方法 使用上の注意点
ご希望の方は、下記購入方法に沿って進めてください。
使用を開始する前に、下記の使用上の注意点、Q&Aも一読いただき、
内容は必ず把握してから使用を開始してください。
不妊患者様向けのPQQサプリは、販売元のロート製薬株式会社様から
使用を推奨される方のみに、しっかりと理由をもって使用してもらいたいという
ご意向をお聞きしています。
そのため一般購入はできず、提携したクリニックQRコードを通してのみ購入ができます。
購入に際してまずは、ROHTO PREMIUM ONLINE にて
アカウント登録+マイクリニック登録を行う必要があります。
まずは新規アカウント登録を行ってください。
ROHTO PREMIUM ONLINE を検索 もしくは、下記QRを読み込んでください。
下段の “ 初めてご利用の方はこちら ” から
アカウントは “LINE” もしくは “メールアドレス” の2つの方法から選択して
ご自身のアカウント登録を行ってください。
アカウント登録がすみましたら、一度画面を閉じていただき、
下記QRコードを読み込んでいただき、ログインを行って下さい。
施設連携のためのQRコードですので、その後は流れにそって進めていただければ
クリニック登録を行うことができます。

ROHTO PREMIUM ONLINE上にてご購入の手続きを行ってください。
男女でお勧めの商品が異なりますので、注意してご購入下さい。
男性: PROFA セルアライブEX (マカ配合)
女性: PROFA セルアライブ
※サプリ使用におきましては、製薬会社指定量・方法を遵守して下さい。
PQQサプリメントを使用する意義は、上述内容を確認の上、
よくご理解の上でご使用いただくよう宜しくお願い致します。
購入に際して よくある質問
当該製品については数ある不妊治療向けサプリの中で、
使用価値のある、つまりお勧めできる製品としてご紹介していますが、
私たちが製造や販売に関わっているわけではありません。
下記のような、製品、購入に関する質問等は基本的に製造・販売元である
ロート製薬株式会社さまにお問い合わせいただくよう
ご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
- 製品の詳細を知りたい。
製品に関する質問は、製造元のロート製薬株式会社さんへご質問下さい。
概説はロート製薬株式会社さんホームページにも記載されております。
また、同社からいただいた実験データについては、このブログ上に記載していますので
参考にしていただき、使用するかの判断をして下さい。
- 購入がうまくできない。
もう一度購入方法の流れを正確にお試しください。
それでも難しい場合は、まずはロート製薬株式会社さんへお問い合わせください。
- 使わなくてもいいのでしょうか。
推奨できるものを提案している立場ですので、
実験データ、費用などから納得できなければ購入はお見送り下さい。
- その他のサプリとの併用は問題ないでしょうか?
抗酸化作用をもつサプリメントは、PQQと重複することになるため、
併用はお勧めできないので、使用を中断していただくことを推奨します。