この項のまとめ

・胚移植前には前周期を策定します。 (主に子宮鏡検査、卵巣腫大改善)
・胚移植周期は、排卵周期とホルモン補充周期があります。
・月経が順調な方は排卵周期を選択します。
・当日の時間の流れは別項でご確認下さい。
候補日
 排卵周期:月火水木金土 ※祝日可 
 ホルモン補充周期:月火水(木)金 

良好胚を凍結できたら、いよいよ胚移植に向かっていきます。
本項では融解胚移植周期の流れや、都度かかる費用などについて説明していきます。

簡単な流れとしまして、
採卵周期 → 胚移植前周期 → 胚移植本番周期
となります。

まずは前周期から説明をしていきます。

前周期の意義・内容

採卵の翌月経周期は、胚移植の準備周期(前周期) となります。
前周期を設定する目的は主に下記の2つです。

① 胚移植前に必要な検査を行う。 = 子宮鏡検査
   胚移植前に妊娠率が落ちるような背景がないかを簡単に精査します。
   子宮鏡検査にて、子宮内腔を観察します。
   ・物理的な異常がないか = 子宮内腔へ突出する子宮筋腫や、ポリープの有無
     →病変が大きければ胚移植前に手術考慮
   ・炎症を示唆する所見がないか= 子宮内腔が赤くなったり、小さな凹凸などの有無
     →所見が強ければ子宮内の細菌環境不良が疑われる 
      胚移植前にEMMA/ALICE検査を考慮


② 卵巣腫大を元に戻す休み期間
   採卵周期に卵巣刺激を行うため、翌周期までは卵巣が腫大している状態です。
   子宮、卵巣が通常の状態の場面で胚移植を行うために、前周期=お休み周期を設けます。
   また保険診療上、月々にできる検査(超音波・採血)回数が制限されていることも、
   前周期を設ける一つの理由です。

前周期は上図のように2回ご来院いただくことが基本です。
1 月経初旬に子宮鏡検査の日程を決め、検査内容の説明をします。
  子宮鏡は平日に行っています。 
  ※子宮鏡検査は基本1回のみ施行します。(=毎回行う必要はありません。) 

  また月経不順の場合は、次の月経が順調に起きるよう内服薬処方を検討します。

2 子宮鏡検査日 
  詳細は看護師から説明いたします。

このような流れで前周期は進んでいきます。
2回目以降の胚移植周期では、前周期診察は適宜省略していきます。
1周期休みはいれますので、その分早く胚移植できるわけではありません。

胚移植周期は2種類から選択 

胚移植周期の組み方として、①排卵周期 ②ホルモン補充周期 の2つの方法があります。
論文報告において両手法とも妊娠率には大きな差はありません。
ただ、周産期合併症(妊娠後から出産までの合併症)において、①排卵周期の方がリスクが低いというデータが複数あります。
そのため、月経周期がある程度安定している場合は①排卵周期を選択し、
逆に月経不順がある程度強い場合は、①で行うのは難しくなりますし、妊娠率が低下する恐れがあるため②ホルモン補充周期で胚移植を組んでいきます。

①排卵周期:ご自身のホルモン分泌(排卵)にあわせて胚移植を行う方法 
   必要分のみ排卵誘発剤、女性ホルモン剤を補助的に使用します。
   薬剤使用が最小限ですみ、費用にも優れています。
   また妊娠期間における合併症リスクが低く、安全性が高い方法。
   排卵日にあわせて胚移植至適日が決まるため、直前まで日程が決まらない。
   また、日程が合わなければ(ご本人都合・休診日)、調整が難しい。

   
②ホルモン補充周期:女性ホルモン剤を補充し、通常の月経周期に似せた周期を形成する方法。
   月経初旬から女性ホルモン剤補充を開始し、妊娠判定日まで継続する。
   全て薬でコントロールするので日程が読みやすい、また胚移植至適日も変更できるので
   日程変更の受け幅が非常に広い。(数日間の中で都合が良い日程を選ぶことが可能。)
   薬剤使用量が多く、やや大変で費用的にやや高くなる。

月経周期的に問題が無ければ、基本は排卵周期下で胚移植を行います。
月経不順などがあれば、ホルモン補充周期にて胚移植を行います。

排卵周期でのスケジュール・費用概算

多くの方が選択される排卵周期下の胚移植の流れを説明します。
排卵周期では、排卵日を確定させることで、至適胚移植日が決まりますので、
まずは排卵日を調べていきます。
下図にあわせて、順に説明します。

月経初旬 月経2~4日
月経周期が不順目な方のみご来院いただき、卵胞発育を助ける排卵誘発剤を処方します。

① 月経12日目頃
元々の月経周期から推測される排卵日の直前頃にご来院いただきます。
採血、超音波検査を行い、予測通り排卵直前頃であれば、胚移植日が決定できます。
※通常、排卵日の5日後が至適胚移植日です。

・まだ排卵日が確定できない場合は、数日後にご来院の指示が入ります。(①´へ)
・既に排卵から数日経過していると推測され、排卵日の確定ができない場合は、
 残念ですが、次周期に再度組みなおす必要があります。

② 胚移植直前
胚移植日の1~2日前を目安に、女性ホルモンのチェックを行います。
結果は胚移植日にお伝えしますので、検体を採取しましたらご帰宅となります。
排卵後に女性ホルモンがどの程度まで上がっているかを確認し、
その値により胚移植後のホルモン補充量を検討します。

③ 胚移植日
朝頃から凍結胚を融解し、培養を始めます。
お昼頃に胚移植を行いますので、必ず指示された時間にはご来院下さい。
胚移植日当日の流れは別項にまとめてありますので、一読下さい。
※日曜日のみ胚移植の施行ができません。

④ 妊娠判定日
胚移植から9日後頃を目安に妊娠判定を行います。
判定が陽性であれば、妊娠管理へと入っていきます。

周期キャンセルとなる場合
・胚移植至適日が日曜日(休診日)にあたってしまい、ホルモン剤でも変更が不可能な場合
・排卵日の確定が難しい周期

ホルモン補充周期でのスケジュール・費用概算

月経不順な傾向がある方が行うホルモン補充周期での胚移植の流れを説明します。
また、お仕事の都合などで日程調整が難しい方に対しても、有効な周期方法です。
月経周期を模倣するように女性ホルモン剤を使用していきます。

①月経初旬 月経1~3日
女性ホルモン剤の1種である、エストロゲン製剤を開始します。
また、採血にて問題がない状況かも確認します。

② 月経12日目頃
エストロゲン製剤に反応した子宮内膜が、妊娠に適した状況になっているかを採血、超音波検査にて確認します。
子宮内膜が十分に厚くなっていれば、胚移植日を決定します。
黄体ホルモン製剤を追加し、追加日から5日後が至適胚移植日となります。
黄体ホルモン開始日により、胚移植日を容易に変更することができますので、
ある程度ご希望の日程で胚移植日を設定することができます。

子宮内膜が十分に厚くなっていない場合は、エストロゲン製剤補充を追加し、
数日後に再度確認を行います。

③ 胚移植直前
胚移植日の1~2日前を目安に、女性ホルモンのチェックを行います。
結果は胚移植日にお伝えしますので、検体を採取しましたらご帰宅となります。
排卵後に女性ホルモンがどの程度まで上がっているかを確認し、
その値により胚移植後のホルモン補充量を変更するかを検討します。

④ 胚移植日
朝頃から凍結胚を融解し、培養を始めます。
お昼頃に胚移植を行いますので、必ず指示された時間にはご来院下さい。
胚移植日当日の流れは別項にまとめてありますので、一読下さい。

⑤ 妊娠判定日
胚移植から9日後頃を目安に妊娠判定を行います。
判定が陽性であれば、妊娠管理へと入っていきます。

周期キャンセルとなる場合
偶発的に卵胞発育があり、胚移植至適日が確定できない場合